【2026年10月第2週】介護分野の賃上げ、
リハ専門職が最も低い
介護関係17団体の調査で、令和8年度の賃上げ額はリハ専門職が月8,300円と、職種別で最も低い結果でした。あわせて、病院や通所リハで障害福祉のサービスが提供できるようになったのに、導入は1%という調査、脳卒中後の就労支援にPT・OT・STが関わっているのに報酬につながっていない話、農林水産省の農福連携への加盟を、一次資料つきで整理しました。いずれも要望や発表の段階で、決まったことではありません。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てです。
2026年10月6日 提出(介護関係17団体の要望書)
01介護分野の賃上げ、リハ専門職は月8,300円で職種別で最も低い
介護の現場で働くリハ職の、今年の賃上げの話です。
介護関係の17団体が、来年度の介護報酬改定に向けた要望書を内閣官房長官に出しました。日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会も入っています。
要望書には、17団体が9月に行った調査の速報がついていました。
令和8年度の賃上げ額(正社員・月額)
- 介護職 10,135円(うちベア分 6,458円)
- 相談員(支援・生活) 9,300円(5,883円)
- 看護職 8,776円(5,676円)
- 事務職 8,643円(5,443円)
- 介護支援専門員 8,622円(5,404円)
- リハ専門職 8,300円(5,083円)
賃上げ額もベア分も、リハ専門職が一番低い結果でした。
なぜ介護職と差がつくのか
令和8年度の臨時改定において、加算の対象者を介護従事者に対象を拡大。(上乗せ措置は、介護職員に限定)
=加算の対象はリハ職にも広がった。ただ、上乗せの部分は介護職員だけ
介護分野全体の賃上げ率は3.93%でした。全産業(春闘)の5.01%には届いていません。
調査は介護分野の事業所が対象で、病院で働くリハ職の数字ではありません。回答は1,445件(8,219事業所分)、令和8年10月2日時点の速報です。
🔭 起こりそうな変化
9月第4週号で紹介した「処遇改善加算をリハ職に配っていた施設は34.3%」と、同じ方向の数字です。加算の対象に入っても、上乗せがなければ差は残ります。介護の職場で働くリハ職は、来年度の改定で上乗せの対象がどこまで広がるかが、自分の明細に直接関わってきます。
前の号:加算をリハ職に配っていた施設の割合
【2026年9月第4週】処遇改善加算、リハ職への配分は34.3% →
2026年9月29日 提出・10月8日 公表(日本理学療法士協会ほか9団体)
02病院と通所リハで障害福祉サービスが提供可能に、でも導入は1%|リハ関連9団体が初めて障害福祉報酬を要望
病院や通所リハで、障害福祉のサービスが提供できるようになっています。
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定で、病院・診療所と通所リハビリテーション事業所でも、自立訓練(機能訓練)が提供できるようになりました。
障害のある方が自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、一定期間にわたり、身体機能や生活能力の維持・向上に必要な訓練を行う障害福祉サービスです。
=自立訓練(機能訓練)とは。退院後、地域での生活や復職に向けて関わる
制度はできたが、ほとんど使われていない
- 導入した施設 1%(3施設)
- 導入予定の施設 3%(11施設)
- 改定内容を「知らない」 42%
- 導入(予定)施設のうち手続きに困難を感じた 71%
困った点は「書類作成の煩雑さ」「定款の変更」「行政手続きに時間がかかる」が上位でした。
全国の自立訓練(機能訓練)事業所は184か所、利用者は2,196名と、もともと少ないサービスです。
リハ関連9団体が、初めて障害福祉報酬への要望
日本理学療法士協会と全国リハビリテーション医療関連団体協議会の9団体が、指定手続きの簡素化、全国一律の運用指針、制度の周知、報酬の見直しを求めました。
調査は日本理学療法士協会が2025年8月に行ったもので、対象は会員が所属する医療施設・通所リハの代表者。回答は404名(回答率3.8%)です。要望は決まったことではありません。
一次資料日本理学療法士協会 政策活動レポート「リハ関連9団体で初となる障害福祉報酬の要望提出!」(2026年10月8日)
🔭 起こりそうな変化
障害福祉の分野に関わりたいと考えているセラピストは多く、支援を必要としている患者さんや利用者さんも多いのが現状です。一方で、この制度自体を知らない人もまだ多い。手続きなどの課題は残っていますが、リハ関連の団体がそろって要望を出したことは大きな一歩だと思います。病院や通所リハにいながら障害福祉に関われる道が、これから広がっていく可能性があります。関心のある人は、今のうちに障害福祉の制度を学んでおけば無駄にはならないはずです。制度がどう動くかを注視していきたいところです。
制度に名前が載ることと、実際に働けることの距離
地域包括支援センターでリハビリ職は働けるのか|基本指針への明記と現場の声から考える →
2026年10月2日 提出(日本脳卒中学会ほか8団体)
03脳卒中後の就労支援、PT・OT・STは半数前後が関わるのに算定は1%未満|相談支援加算への追加を要望
脳卒中のあと、仕事に戻るための支援の話です。
日本脳卒中学会など8団体が、厚生労働大臣に要望書を出しました。リハ職3団体も入っています。
PT・OT・STは就労支援に関わっている
11府県の調査で、復職の候補になる脳卒中の患者さん2,932名のうち、就労支援のリハビリを行った割合です。
- 理学療法士 45.1%
- 作業療法士 53.5%
- 言語聴覚士 68.0%(失語のある372名のうち)
でも、報酬にはほとんどつながっていない
そのうち「療養・就労両立支援指導料」が算定できたのは、いずれも1%未満でした。PT・OT・STが、この指導料の相談支援加算の対象職種に入っていないことが理由に挙げられています。
就労支援のリハビリは、多くが退院のときに終わっていました。退院後12か月以上続けられたのは、PT 1.5%・OT 1.0%・ST 4.4%です。
要望の中身
- 指導料を算定できる期間(初回から6か月)を延ばす
- 相談支援加算の対象職種に、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を加える
- 脳血管疾患等リハビリテーション料の標準的算定日数の除外対象に「脳卒中後の就労支援」を加える
要望の段階で、決まったことではありません。調査は令和5年度厚労科研費の研究班によるもので、要望書の本文に数字が載っています。
🔭 起こりそうな変化
リハスタッフは入院中から就労支援をしていますが、退院するとそこで終わってしまうことが多いのが実情です。病院としても、今の仕組みの中で就労支援を続けていくのはかなり難しい。仕事への復帰を目指す患者さんは、介護保険を使えない、または使わないことも多くあります。病院の外来でのフォローでも、別の形でも、仕事への復帰や社会復帰まで支援を続けられる体制ができれば大きな前進です。この分野に関心のあるセラピストは多いはずなので、就労支援について今学んでおくことは、将来やりたい分野につながるかもしれません。
退院後も続ける再評価(米国のガイドライン)
脳卒中リハビリのガイドライン2026|要点11項目と職種別のポイント →
2026年10月8日 公表(日本理学療法士協会)
04農業の現場に理学療法士の専門性を|PT協会が農林水産省の農福連携コンソーシアムに加盟
農業と福祉をつなぐ取り組みに、理学療法士の協会が加わりました。
日本理学療法士協会が、農林水産省の「農福連携等応援コンソーシアム」への加盟を承認されたと発表しました。
農福連携は、障害のある人や高齢者などが農業の分野で活躍し、社会参加や生きがいづくり、農業の担い手の確保につなげる取り組みです。コンソーシアムは2020年3月に設立されています。
協会は、理学療法士の専門性を生かして、農業を含む地域活動への参加を支えたいとしています。具体的な取り組みは、これから検討するとしています。
加盟の発表の段階で、理学療法士が農業の現場で何をするかは、まだ決まっていません。
🔭 起こりそうな変化
作業の動きを分析して、その人に合うやり方や道具、環境を考える。病院でやっていることは、畑や作業場でもそのまま活かせます。9月第1週号で紹介した13省庁への要望書にも農林水産省が入っていました。具体的な関わり方はこれからですが、厚生労働省の外にもリハ職の職域が広がっていく可能性があります。今の臨床で積んでいる経験は、こうした新しい分野でも無駄にならないはずです。
前の号:13の省庁に出した要望書
【2026年9月第1週】リハ職の「職域」と「数」が動いた1週間|PT協会13省庁要望・養成課程の見直し →
今号を通して見えること
今号の2本目から4本目は、どれも病院の外にリハ職の仕事を広げる話でした。障害福祉、就労支援、農業。制度や取り組みの入口は、少しずつできています。
ただ、入口ができても使われていません。自立訓練(機能訓練)は導入が1%、就労支援の指導料はPT・OT・STでは1%未満しか算定されていない。制度があることと、現場で回ることの間には、まだ大きな距離があります。
そして1本目の賃上げの数字も、同じ距離の話でした。処遇改善の対象に入っても、上乗せは介護職員だけ。「対象に入る」と「十分に届く」は別だということが、今号の4本に共通しています。それでも、要望が出て、入口ができたこと自体は前進です。課題はあっても職域は広がりつつある。今号はその途中経過を、数字で確かめた回でした。
自分のキャリアに引きつけて読む
今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。
制度が変わっても、動けるかは準備次第
働ける場所や役割が広がっても、「制度上は可能になった」で止まることは少なくありません。
臨床の学び直しも、臨床の外で使えるスキルも、いまはオンラインで学べます。
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