制度とエビデンス

脳卒中リハビリのガイドラインが10年ぶりに改訂された
全体の要点11項目と、PT・OT・ST別に出ているポイント

最終更新:2026年9月17日

アメリカ心臓協会とアメリカ脳卒中協会が、成人脳卒中リハビリテーションのガイドラインを改訂しました。
前回が2016年なので、10年ぶりの更新です。
全体の要点が11項目、そのうえでPT・OT・STそれぞれ向けの要点も別に出ています。 まず全体像を整理します。

全体の要点11項目を、テーマで並べ替える

原典は11項目が番号順に並んでいます。ここでは近いものをまとめ直しました。 かっこ内の数字が、原典での項目番号です。

リハビリをどう提供するか

多職種で関わり、回復と代償を組み合わせる1

障害される機能が多岐にわたるため、機能そのものの回復を目指す介入と、別のやり方で補う代償的な介入の両方が要るとされています。

急性期のケアの段階からリハビリを始める2

職種間で切れ目なく連携することが前提に置かれています。急性期から始めること自体は、ガイドラインの側も求めている内容です。

十分な量と強度で。発症24時間以降は中〜高強度4

課題練習をさまざまな種類で、十分な量と強度で行う。発症から24時間以降については、中強度から高強度と明記されています。

評価は一度で終わらせない

節目ごとに評価し直し、必要なら治療に戻す5

新しい目標を決めるためだけでなく、機能の低下を防ぐためにも、再評価と治療への再導入が要るとされています。

身体機能・活動・参加の3レベルで標準化された指標を使う10

退院してリハビリが終わったあとも定期的に評価し、機能低下や新しい問題が出ていないかを見る、という書き方になっています。

支える人も対象に入る

介護パートナーへの教育とトレーニング6

本人のリハビリを最大化するためであり、同時に介護する側自身のウェルビーイングを支えるためでもある、と両方が並べて書かれています。

見落とすと回復が止まるもの

うつと不安を早期にスクリーニングし、時期を変えて繰り返す7

メンタルヘルスは回復の中核的な要素と位置づけられています。脳卒中後うつはよくある合併症で、しかも治療できるものだと明記されています。

動かないことによる二次合併症11

褥瘡や静脈血栓塞栓症が回復を妨げるとされています。ただし現行の指針は「移動能力が低下した入院患者」という幅広い集団のデータに基づくもので、リハビリを受けている患者に特化した研究が必要だとも書かれています。

届け方を変える

通院が難しい人には遠隔医療を検討する8

アクセスの改善だけでなく、ケアの費用対効果を改善しうる手段としても挙げられています。

ガイドライン自身が認めている限界

最良の方法・時期・用量には、まだ不確実性が残る3

ここは読み飛ばさないほうがいい箇所です。ガイドラインは「これが正解」と示しているわけではない、と自分で書いています。

空白を埋める大規模な試験が要る9

リハビリ介入について、より大規模で適切に設計された臨床試験が決定的に重要だとされています。

11項目を並べて見えてくること

量と強度の話(4)が目を引きますが、11項目のうち半分近くは練習そのもの以外のことを言っています。

介護パートナーへの教育(6)、メンタルヘルスのスクリーニング(7)、遠隔医療(8)、 退院後の再評価(10)。どれも、リハビリ室で完結しない話です。

そして3番と9番で、最良の方法も時期も用量もまだ確定していないと明記しています。 強い推奨と、分かっていないことの表明が、同じ11項目のなかに並んでいる。 読むときはそこも含めて見るのがよさそうです。

PT・OT・ST別にも要点が出ている

全体の11項目とは別に、職種ごとの要点が公開されています。 ここでは実務に直結しそうなものを抜き出しました。全項目は原典でご確認ください。

理学療法士(PT)

9項目
  • 超急性期(24時間より前)は高用量・超高強度を避け、急性期(24〜48時間)は体位変換と離床を段階的に進める
  • 高用量で課題特異的な歩行練習は亜急性期の早い段階から。重篤な有害事象は増えなかったとされている
  • 転倒リスクの評価はできるだけ早く行い、その後は毎年
  • 下垂足へのFESは、従来の装具と同等の歩行改善

作業療法士(OT)

10項目
  • 感覚と運動(四肢・体幹・嚥下)の項目に「反復を超えろ」という見出しが立てられている
  • 社会的・物理的な環境を整えることが、独立した項目として置かれている
  • 認知・コミュニケーション、視覚・知覚、気分とエネルギーが、それぞれ別項目
  • 自助具と福祉用具の選択、地域への統合も項目に入っている

言語聴覚士(ST)

10項目
  • 嚥下障害のスクリーニングは、入院から24時間以内かつ経口摂取の前に
  • 嚥下障害を疑ったら、ベッドサイドの評価で終わらせず包括的な評価を
  • 発話・言語・認知・聴覚を切り離さず、コミュニケーション全体として見る
  • コミュニケーションパートナーを用意する。聴覚評価も提供する

離床は、時期によって書かれていることが違う

要点の4番は「24時間以降は中〜高強度」でした。では24時間より前はどうか。 ここは時期ごとに分けて書かれています。

発症24時間より前(超早期)

高い頻度での離床は勧められていません。とくに重度の機能障害・脳出血・意識レベルの変容がある人では、 強い負荷を含む高用量の療法を避けるとされています。

発症24〜48時間(早期)

体位変換と離床を段階的に進めるプロトコルが推奨されています。 理学療法士・作業療法士・看護スタッフのほか、指導を受けた家族が実施する形も想定されています。

根拠になったのは、この分野で最大の試験です。発症から中央値18.5時間という早さで高い頻度の離床を行った群で、 3か月後の転帰が良好である割合が低かったと報告されています。とくに当てはまったのは、 12時間未満で離床した人と、1回が長く回数も多かった人でした。

脆弱だったとされるのは、NIHSSスコアが不良な人、脳出血の人、意識障害のある人です。

ただし「24時間以内は禁止」とは書かれていません。勧められていないのは、 対象を選ばずに超早期離床を行うことです。あわせて、どの集団についても最適な量は確立されていないとも明記されています。

今年の診療報酬改定と、並べて読む

同じ年に、日本では早期リハビリテーション加算が見直されました。 起算日が入院した日になり、入院初日から3日目までが60点、4日目から14日目までが25点です。

改定資料に書かれた趣旨

入院直後における早期リハビリテーション介入を推進する観点から、早期リハビリテーション加算の評価及び算定要件を見直し、入院後、3日以内の早期リハビリテーションを更に評価する。

ここで確認しておきたいのは、加算が定めているのが起算日と日数だけだということです。 リハビリの内容、1日の回数、強度についての規定はありません。

早期リハビリテーション加算

いつから始めたかを評価する。起算日と日数だけを定めている。

脳卒中リハのガイドライン

どのくらいの頻度と強度で行うかを扱う。急性期から始めること自体は前提にしている。

早く始めることと、初日から多くやることは同じではありません。 脳卒中に関しては、開始の判断と、頻度・強度の判断は分けて考えることになりそうです。

この記事の範囲について

  • ここで紹介しているのは、アメリカ心臓協会・アメリカ脳卒中協会のガイドラインです。対象は脳卒中の患者さんで、整形外科術後など他の領域について述べたものではありません。
  • 要点は当サイトで内容を要約したものです。原典の表現そのままではありません。推奨の強さ(推奨クラス・エビデンスレベル)は記載していないので、原典でご確認ください。
  • 早期リハビリテーション加算の改定は、すべての疾患別リハビリテーション料に共通のものです。脳卒中だけの話ではありません。
  • 実際の開始時期や進め方は、主治医の指示と各施設の基準に沿って判断されるものです。

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出典