ホーム/コラム/地域包括支援センターとリハビリ職
キャリアチェンジ

地域包括支援センターでリハビリ職は働けるのか|基本指針への明記と現場の声から考える

2026年6月、地域包括支援センターの職員配置に「リハビリテーション専門職」が国の基本指針案で明記されました。病院・施設以外の職域として気になっている方に向けて、何が決まったのか・現場はどう見ているのか・キャリアとして何を意味するのかを整理します。

何が決まったのか

厚生労働省が社会保障審議会介護保険部会で示した第10期介護保険事業計画(令和9〜11年度)の基本指針案に、地域包括支援センターの体制について次のように記載されました。

「リハビリテーション専門職等の専門職や事務職の配置も含め、必要な体制を検討し、その確保に取り組むことが重要である」

地域包括支援センターはこれまで保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種が中心でした。そこに、リハビリ専門職を含む多職種での体制整備が位置づけられた形です。

ただし、2026年7月15日の国会質疑では「人員配置基準そのものの見直しには至っていない」という課題も指摘されています。つまり配置は義務ではなく推奨であり、実際に配置するかは自治体の判断に委ねられています。

出典:PT-OT-ST.NET「地域包括支援センターの体制強化へ 基本指針案にリハ専門職等の配置を明記」

現場はどう見ているか

当サイトのSNSでこのニュースを取り上げたところ、リハビリ職だけでなく、地域包括支援センターで実際に働く方からも多くの反応が寄せられました。個人が特定されない形で、5つの論点にまとめます。

🤝期待

介護予防とリハビリは相性がいい

「リハ職がいたら介護予防にはとても良いと思う」という声が複数ありました。運動機能の評価・住環境のアドバイス・生活動作の指導は、まさにリハ職が日々やっていることです。

🩺期待

保健師不足を補う「医療職」としての期待

「現場は保健師(看護師)が圧倒的に足りていない。その代わりの医療職としてリハ職が求められるのでは」という見方も。医療の視点を持つ職種として期待されている側面があります。

疑問

総合相談や要支援の担当まで持つのか

地域包括支援センターで実際に働く保健師の方から「リハ職も総合相談を受けたり、要支援の方を担当するのでしょうか」という疑問が挙がりました。役割の線引きは、まだはっきりしていません。

💰課題

待遇が見合うかどうか

「それに見合う給与が払えればリハ職も入る」という指摘。配置が推奨されても、処遇が伴わなければ人は動きません。ここは今後の制度設計にかかっている部分です。

🗾課題

地域差が出るのではないか

「うちの包括は田舎なのでリハ職は来ないだろう」という声も。義務化ではなく自治体判断のため、都市部と地方で進み方に差が出る可能性があります。

期待と課題の両方が挙がりましたが、共通していたのは「リハ職と介護予防の相性の良さは、みんな認めている」ということでした。課題として挙がった待遇や地域差は、専門職としての価値が否定されているわけではなく、制度の作り込みがこれからだという話です。

地域包括支援センターでリハ職は何をするのか

センターの主な業務のうち、リハビリ職の専門性が活きる領域を整理しました。

01介護予防ケアマネジメント

要支援の方や事業対象者に対して、心身の状態を評価し、目標を立て、サービスにつなげる仕事。動作分析やADL評価の視点がそのまま活きる領域です。

02地域リハビリテーション活動支援

住民主体の通いの場(体操教室・サロンなど)に出向いて助言する役割。すでにリハ職が関わっている自治体も多く、最も接点のある業務です。

03総合相談支援

高齢者や家族からの相談窓口。「歩けなくなってきた」「家の中で転ぶ」といった相談は、リハ職の知識が直接役立つ場面です。

04多職種連携・ケア会議への参加

地域ケア会議で専門的な助言を行う役割。すでに「リハ職の助言者派遣」を行っている自治体もあり、経験が評価されやすい領域です。

いずれも「治す」より「暮らしを支える」仕事です。臨床で培った評価の目を、病院の外で使うイメージが近いかもしれません。

今から準備できること

① 地域の介護予防事業に関わってみる

自治体の通いの場への助言者派遣や、地域ケア会議への参加は、今の職場にいながら経験できることがあります。まずは職場の地域連携担当に「そういう依頼は来ていますか」と聞いてみるところから。

② 「生活を評価する言葉」を持っておく

地域の現場では、機能訓練より「その人の暮らしがどう成り立っているか」を説明する力が求められます。ADL・IADL・住環境・家族状況をまとめて語れることが強みになります。

③ 求人の出方をウォッチしておく

配置が進むとしても、自治体ごとに時期はバラバラです。地域包括や介護予防関連の求人は数が少なく、出たときに気づけるかどうかが分かれ目になります。

「決まったこと」より「これから決まること」が多い

今回明記されたのは方向性であって、人員配置基準や待遇はこれから議論される部分です。すぐに求人が増えるとは限りません。

ただ、国の文書に職種名が書かれることには意味があります。予算がつく根拠になり、自治体が動く理由になるからです。実際、骨太の方針2026でもリハビリテーションは「攻めの予防医療」として位置づけられました。「病院の中のリハ職」から「地域を支えるリハ職」へ、流れは少しずつ動いています。

今すぐ転職する話ではなくても、「病院以外にも道がある」と知っておくこと自体が、キャリアの安心につながります