【2026年10月第1週】回復期の週7日リハ、
入院料3・4も必須に
回復期リハ病棟入院料の経過措置が9月30日で終わり、入院料3・4の病棟でも、休日を含む週7日のリハ提供体制が必要になりました。来年度の介護報酬改定に向けた「基本的な視点(案)」には生活期のリハビリが入り、文部科学省とこども家庭庁の概算要求には学校や乳児院でリハ職が関わる事業があります。PTの学会が出した嚥下理学療法コンセンサスブックもあわせて、一次資料つきで整理しました。02は「案」、03は「要求」の段階で、決まったことではありません。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てです。
2026年9月30日 経過措置の期限(令和8年度 診療報酬改定)
01回復期リハ病棟、入院料3・4でも「週7日リハ」が必須に|経過措置が9月末で終了
回復期リハ病棟で働いている人の、土日の勤務に関わる話です。
令和8年度の診療報酬改定で、回復期リハビリテーション病棟入院料の要件が見直されました。一部の要件には、9月30日までの経過措置がついていました。
その経過措置が終わりました。10月からは、次の要件を満たしていないと、今の入院料を続けて算定できません。
9月30日で経過措置が終わった要件
- 入院料2・4 リハビリの実績指数が32以上
- 入院料3・4 休日を含め、週7日リハビリを提供できる体制
並んでいるのは、経過措置が終わった要件だけです。基準そのものは入院料3のほうが入院料4より厳しく、実績指数は入院料3が37以上、入院料4が32以上です。
休日を含め、週七日間リハビリテーションを提供できる体制を有していること。
=入院料3の病棟も、土日祝を含めて毎日リハビリを出せる体制が必要
対象は「3月末に届け出ていた病棟」
経過措置の対象は、令和8年3月31日の時点で入院料2〜4を届け出ていた病棟です。改定の前から算定していた病棟に、半年の準備期間があった形です。
続けて算定する病院は、要件を満たしたうえで届け出をし直します。九州厚生局の案内では、届出の期限は10月14日(必着)です。
日付の整理:告示は令和8年3月5日、改定の適用は6月1日、経過措置の期限は9月30日です。入院料1・2の週7日の体制は、この経過措置の対象ではありません。
一次資料基本診療料の施設基準等の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第70号)第九の十・経過措置
一次資料九州厚生局「令和8年度診療報酬改定において経過措置が設けられた施設基準の取扱いについて(令和8年9月30日までの経過措置)」
🔭 起こりそうな変化
入院料3・4の病棟で、これまで土日のリハを手薄にしていた病院は、休日出勤のシフトを組み直すことになります。土日に出られる人が求められる一方で、休日に人を回す分、平日の人数が薄くなる職場もありえます。回復期への転職を考えている人は、「土日の出勤は月に何回か」「振替休日はきちんと取れているか」を面接で聞いておくと、入職後の働き方が具体的に見えます。
365日体制で、求められる人材がどう変わるか
土日も働ける人は強い|365日リハ体制の要件化で高まるPT・OT・STの価値 →
2026年9月30日 開催(第268回 社会保障審議会 介護給付費分科会)
02来年度の介護報酬改定、5つの視点に「生活期のリハビリ」|処遇改善は「他職種と遜色なく」
来年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けて、議論の土台になる「基本的な視点」の案が出ました。
4月から9回の議論と、関係団体との3回の意見交換会を踏まえた整理です。前号で紹介したリハ職3団体の要望も、この意見交換会で出たものです。
5つの視点
- ① 物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善
- ② 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
- ③ 地域包括ケアシステムの深化
- ④ 職場環境の改善と生産性の向上を通じたサービスの質の向上及び介護人材の確保
- ⑤ 制度の安定性・持続可能性の確保
リハビリが名前で出てくるのは③の1か所
医療ニーズが高い方への対応や看取りへの対応を含めた医療と介護の連携や生活期における自立支援に向けたリハビリテーションを一層推進する
=生活期の、自立支援につながるリハビリを進める
本文の中で「リハビリテーション」という言葉が出てくるのは、ここだけです。
処遇改善は「他職種と遜色のない」水準を目指す
他職種と遜色のない処遇改善を実現し、人材の定着・離職を防止する環境を整備していくことが重要である。
=介護分野で働く人の処遇を、ほかの職種と比べて見劣りしない水準に
ここでの対象は「介護分野の職員」と書かれています。リハ職がどこまで含まれるかは、この文書からは読み取れません。
これは「案」です。9月30日の分科会で議論された段階で、具体的な点数や要件はまだ決まっていません。
🔭 起こりそうな変化
生活期の自立支援リハが視点に入ったことで、訪問リハや通所リハの評価が議論されていく可能性があります。ただ、視点⑤には「評価の適正化・重点化」「報酬体系の整理・簡素化」も並んでいます。加算が増えるだけでなく、整理・統合される方向もありえます。生活期で働く人は、どの加算が残り、どれがまとめられるかを追っておくと、職場の収益の柱が変わるかどうかを早めに知ることができます。
前号:意見交換会でリハ職3団体が出した数字
【2026年9月第4週】処遇改善加算、リハ職への配分は34.3% →
2026年8月 公表(令和9年度 概算要求)
03学校と乳児院に、リハ職の予算|文部科学省は900人分を要求
リハ職が働く場所は、病院と介護だけではありません。
9月第1週号で、日本理学療法士協会が13の省庁に要望書を出したことを紹介しました。その後に出た各省の来年度予算の要求(概算要求)を見ると、PT・OT・STの名前が入った事業があります。
文部科学省:学校の「外部専門家」
専門的見地から、教員に助言等を行う、医師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、手話通訳士などの専門家の活用を支援
=学校の先生に、専門家として助言する役割
- 要求額 195百万円(今年度180百万円)
- 補助の対象人数 900人分(170人増)
特別支援教育の充実(要求額195億円)の中の事業です。
こども家庭庁:乳児院や児童養護施設
障害児支援事業所等との連絡調整や施設等における養育上の支援、職員への指導・助言、実親への助言等を行うために理学療法士や作業療法士等を配置する。【拡充】
=施設の職員や親に助言する立場として、PT・OTを置く
- 対象施設 乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、児童心理治療施設、母子生活支援施設など
- 補助基準額 1か所あたり2,823千円
概算要求は、各省が財務省に出す「要求」の段階です。年末の予算編成で、金額が変わったりなくなったりすることがあります。
🔭 起こりそうな変化
どちらも、リハ職が「治療する人」ではなく「助言する人」として置かれているのが共通点です。学校の先生や施設の職員に、専門家として関わる形です。病院で積んだ評価や環境調整の経験は、そのまま活きます。雇用の形(常勤か非常勤か)は自治体や施設によって違うので、関わりたい人は、住んでいる自治体の教育委員会や施設がどう募集しているかを見るところからになりそうです。
こどもの分野で働く、もうひとつの道
保育所でPT・OT・STが働くには|「保育士とみなす特例」の要件と求人の実際 →
2026年9月 公開(日本栄養・嚥下理学療法学会)
04「嚥下理学療法コンセンサスブック」公開|PTがチームに必須かは「明確でない」とも書いた
嚥下は、言語聴覚士の領域だと思われがちです。
理学療法士の学会が、PTとして嚥下にどう関わるかを、21の臨床疑問(CQ)にまとめて公開しました。
嚥下理学療法は、摂食嚥下機能を阻害する因子に対して呼吸・姿勢調整などを多角的に捉え、運動療法・物理療法などの理学療法技術を通じて介入するものである。
=飲み込みそのものより、呼吸や姿勢、全身から関わる
21のCQは、呼吸から集中治療まで
- 呼吸(CQ1〜3)
- 姿勢(CQ4〜6)
- 頸部・肩甲帯(CQ7〜9)
- 体幹(CQ10〜11)
- 全身機能・身体活動・栄養(CQ12〜15)
- 顎関節(CQ16〜17)
- 認知機能(CQ18)
- 多職種連携(CQ19)
- 集中治療(CQ20〜21)
臨床でそのまま使える数字
- 食事中の誤嚥を防ぐ姿勢 30度以上のセミファーラー位に、必要に応じて頭部の代償姿勢(チンダウンなど)を併用する(CQ5)
- 離床時間 高齢者の嚥下機能の維持には、1日4時間以上が必要な可能性がある(CQ14)
- 椅子からの立ち上がり 回復期の脳卒中患者で、1日36回以上の群は36回未満の群よりFILSが改善したという報告がある(CQ13)
「PTが必須かは明確でない」
理学療法士を含めた多職種連携チームで摂食嚥下障害患者の治療を行うことは摂食嚥下機能の改善に寄与する。しかし、摂食嚥下機能の改善のためのチームに理学療法士が必須であるかは現状では明確でない。
=チームで関わる効果はある。ただ、PTがいなければならないとまでは言えない
PTの学会自身が、こう書いています。
このコンセンサスブックは、エビデンスレベルのランクづけをしていません。嚥下理学療法の定義や実践がまだ十分に広がっておらず、質の高いエビデンスを集めることが難しいためとしています。数字は「こういう報告がある」という水準で読むのが妥当です。
🔭 起こりそうな変化
PTが嚥下に関わる根拠が、まとまった形で出たのは大きいと思います。急性期や回復期で、姿勢や離床の面から嚥下に関わる場面は増えるかもしれません。一方で、学会自身が「必須とまでは言えない」と書いている点は誠実です。嚥下に関わりたいPTにとっては、STや看護師と役割を分け合いながら、呼吸・姿勢・離床という自分の持ち場で根拠を示していくことが、立ち位置を作ることにつながりそうです。
STの嚥下スクリーニングは24時間以内(米国のガイドライン)
脳卒中リハビリのガイドライン2026|要点11項目と職種別のポイント →
今号を通して見えること
今号の4本は、どれもリハ職がどこで、いつ働くかに関わる話でした。回復期は土日へ、生活期は改定の視点へ、そして学校や乳児院、嚥下の領域へ。持ち場が少しずつ動いています。
ただ、動き方はそれぞれ違います。回復期の週7日はすでに始まった要件です。介護報酬の視点は案、学校と乳児院の予算は要求の段階で、まだ変わる可能性があります。
そして嚥下のコンセンサスブックは、PTの学会が「必須とまでは言えない」と自分で書いたうえで、関わり方をまとめたものでした。新しい持ち場は、制度が用意してくれるだけでなく、根拠を積み上げて自分たちで作るものでもある。今号はそれが見えた回でした。
自分のキャリアに引きつけて読む
今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。
制度が変わっても、動けるかは準備次第
働ける場所や役割が広がっても、「制度上は可能になった」で止まることは少なくありません。
臨床の学び直しも、臨床の外で使えるスキルも、いまはオンラインで学べます。
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次号もキャリアに関わる動きを厳選してお届けします。