【2026年9月第1週】リハ職の「職域」と「数」が
動いた1週間
今週は、リハ職の働く場所を広げようとする動きと、リハ職の人数そのものを見直そうとする動きが、同じ週に別々の場所で進みました。職能団体は13省庁へ要望を出し、国の検討会では養成課程と養成体制が議論されています。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てであり、確定した将来予測ではありません。
2026年8月24日 公表(提出は7〜8月)
01PT協会が13省庁に要望書、職域は「受刑者・観光・まちづくり」まで広がる
日本理学療法士協会が、2027年度(令和9年度)予算概算要求に向けて、2026年7月から8月にかけて13の省庁へ要望書を提出したことを8月24日に公表しました。提出先は厚生労働省、文部科学省、スポーツ庁、こども家庭庁、国土交通省、観光庁、経済産業省、外務省、農林水産省、法務省、内閣府(消費者庁)、内閣官房、総務省です。
要望項目を並べると、理学療法士の職域をどこまで広げようとしているかが見えてきます。厚生労働省へは「賃上げ等による医療・介護・福祉における理学療法士の人材確保および提供体制の整備」、こども家庭庁へは「こども家庭庁への理学療法士を含むリハビリテーション専門職の配置」「すべてのこどもに向けた発達・療育支援の充実」「産前・産後サポート事業における具体的な提案」が挙げられています。
医療・介護の外にも広がっています。法務省へは「受刑者への運動機能維持向上プログラムに関する理学療法士の活用」、観光庁へは「ユニバーサルツーリズムへのリハビリテーション専門職の活用」、国土交通省へは「高齢運転者等の新たな事故防止対策としての理学療法士の活用」「まちづくりへの理学療法士の活用」、農林水産省へは「農福連携型事業への理学療法士の活用」が要望されました。
内閣官房へは「『リハビリテーション国家戦略(仮称)』の策定および『攻めの予防医療』におけるリハビリテーション専門職の活用」を、総務省へは「『公立病院経営強化ガイドライン』におけるリハビリテーション実施体制の拡充および専門職の確保」を要望しています。あくまで職能団体からの要望であり、予算がつくかどうかはこれから決まる段階です。
🔭 起こりそうな変化
要望書は「今こうなっている」ではなく「こうしたい」を示す文書です。ただ、職能団体がどこに働きかけているかを知っておくと、数年後に求人として現れる領域の見当がつきます。実際、保育所での特例のように、要望が制度に反映されるまでには数年かかるのが通例です。いま挙がっているのは、こども・観光・司法・まちづくりといった、これまで求人票では見かけなかった領域でした。
こども領域で実際に開かれた制度はこちら
保育所でPT・OT・STが働くには|「保育士とみなす特例」の要件と求人の実際 →
2026年8月24日 開催(検討会 第4回)
02PTからOTへは「2年・66単位」で移れる|ただし履修免除を入れても入学者は増えていない
厚生労働省は8月24日に「第4回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」を開催しました。資料には、現行制度における各職種の修業年限が整理されています。理学療法士を目指す場合、基本は3年以上(101単位)ですが、作業療法士の資格を持っていれば2年以上(66単位)に短縮されます。逆も同様で、作業療法士を目指す理学療法士も2年以上(66単位)です。
言語聴覚士は基本3年以上(101単位)ですが、大学卒業者等であれば2年以上(81単位)、大学や高専等で2年以上修業し指定科目を修めた者であれば1年以上(81単位)となっています。PT・OT・ST間のキャリアチェンジは、制度上はすでに短縮ルートが用意されている、ということになります。
あわせて「医療関係職種へのキャリアチェンジ推進に係る調査研究事業」の速報値が示されました。2026年7月15日から29日にかけて全国1,920校を対象に実施し、1,134校が回答(回答率60.3%)。理学療法士の養成校は266校中163校、作業療法士は194校中116校、言語聴覚士は73校中39校が回答しています。
既修単位の評価による履修免除・単位認定を「実施している」と答えたのは全職種で70.9%(PT 68.7%、OT 75.0%、ST 66.7%)。対象は基礎分野が95.0%と最も多く、専門基礎分野55.3%、専門分野35.2%と、専門性が高い分野ほど対象になりにくい傾向でした。認定された単位数は学生1人あたり平均3単位程度です。
注目したいのは効果です。履修免除・単位認定を導入したことによる入学者数の変化について、「変化はなかった」が86.1%を占め、「増加した」と答えた学校は3.3%にとどまりました。導入理由の1位は「社会人の入学促進」(全職種45.7%、PTでは58.6%)でしたが、狙いどおりの結果にはなっていないことになります。なお、社会人または既資格者専用の課程・学級を設けている学校は全職種で1.3%しかありませんでした。
🔭 起こりそうな変化
「PTからOTへ」「OTからPTへ」の資格取得が2年で可能だと知らなかった方は少なくないはずです。制度としては開かれているのに、社会人専用の課程を持つ学校が1.3%しかなく、単位認定も基礎分野が中心で平均3単位程度。つまり、働きながら通える設計にはまだなっていない、というのが現状に見えます。検討会では週末・夜間コースや遠隔授業+スクーリングといった案も出ており、ここが変われば、職種を変えるという選択肢は現実味を帯びてきます。
職場を変えて幅を広げる選択肢はこちら
転職でPT・OT・STとしての「幅」が広がる|施設を変えることで得られるキャリアの可能性 →
2026年8月24日 開催(検討会 第4回)
03リハ職の「数」を国が把握する方向へ|養成校の統廃合も論点に
同じ検討会の資料4では、医療関係職種の養成・確保体制そのものが論点として扱われています。資料には「医師、歯科医師、看護師以外の医療関係職種に関するデータは十分に把握できておらず、継続的に把握を行っていくことが必要」との意見が記載されています。つまり、PT・OT・STが地域別・年齢別・勤務先別にどう分布しているかを、国はまだ十分に把握していないということです。
これに対し、都道府県ごとに各職種の過不足の状況を把握し、関係者による協議の場を設けるといった制度的な枠組みを整えるべき、という意見が挙がっています。学校の定員充足率などを報告する定型フォーマットを作り、各学校に報告を求める仕組みの構築が必要という意見も記載されました。
資料には「学校の定員は、学校経営者が経営も考えた上での定員設定であり、決して医療従事者の必要数ではない」という指摘や、「あまりたくさんつくってしまうと、2040年が過ぎた後、どうやってその人たちを医療で支えて養っていくのかという問題が出てきかねない」という意見も収録されています。あわせて、学校法人の経営統合(統廃合)の実務的な手順を示した図まで資料に含まれていました。
🔭 起こりそうな変化
養成数が国の管理下に入る方向に議論が進んでいます。長い目で見れば、供給が調整されることは働く側にとって悪い話ばかりではありません。人数が増え続ければ待遇の競争は厳しくなり、絞られれば希少性は上がるからです。ただし、これは10年単位の話であり、いま転職を考えている方の判断材料になるものではありません。「そういう議論が始まった」という程度に押さえておけば十分だと思います。
供給過剰と将来の構造を整理した記事はこちら
PT・OT・STが知っておきたい、働き方の将来リスク4つ →
2026年7月23日 公表
04スポーツ復帰の評価項目が標準化、3疾患で病期別のフレームワークを公表
日本スポーツ理学療法学会の標準化検討委員会が、スポーツ理学療法評価の標準化を目的として、足関節捻挫・投球障害(肩・肘)・膝前十字靱帯損傷の3疾患について、必要となる評価項目の検討結果を公表しました。公表は2026年7月23日です。
評価項目の抽出には修正Delphi法が用いられ、同学会の会員を専門家集団として、延べ1,400名を超える方々へ最大3回のアンケート調査が実施されました。個人の経験則ではなく、専門家の合意によって項目が絞り込まれている点が特徴です。
病期の区切り方も疾患ごとに整理されています。足関節捻挫と投球障害では Return to Participation・Return to Sport・Return to Performance の3段階、膝前十字靱帯損傷では Preoperative・Return to Running・Return to Participant・Return to Sport & Performance の4段階が設定されました。どの時期に何を評価するかが、疾患別・病期別に示された形です。
🔭 起こりそうな変化
スポーツ領域に関わっていなくても、整形外科クリニックや外来で足関節捻挫や投球障害を診る機会のある方は多いはずです。「復帰の判断を何を根拠にするか」に迷ったとき、学会の合意で絞り込まれた項目を持っているかどうかは、説明のしやすさに直結します。前号で取り上げた地域理学療法のコアアウトカムセットと同じで、評価の共通言語が増えると、職場が変わっても持ち運べる武器になります。
持ち運べる強みを整理したい方はこちら
PTOTSTが転職で無双できる8つのスキル|気づいていない自分の強みを知ろう →
今号を通して見えること
並べてみると、今週動いたのは「職域を広げる話」と「人数を絞る話」という、方向の違う2つでした。職能団体は受刑者・観光・まちづくりまで働く場所を広げようと要望し、国の検討会では養成校の統廃合や需給の把握が論点になっています。矛盾しているようですが、どちらも「限られた人数をどこに配置するか」という同じ問いの裏表とも読めます。
もうひとつ、今号で確かめておきたいのはPT・OT間のキャリアチェンジが制度上は2年で可能だという事実です。知られていないだけで、選択肢としては存在します。ただし社会人向けの課程を持つ学校は1.3%しかなく、いま実行できる人は限られる。「制度上できること」と「実際にできること」の距離は、今号でも変わりませんでした。
自分のキャリアに引きつけて読む
今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。
制度が変わっても、動けるかは準備次第
働ける場所や役割が広がっても、「制度上は可能になった」で止まることは少なくありません。
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