業界ニュース

【2026年9月第2週】国の来年度予算にリハ職の「名前」と「役割」が出てきた週

今週は、厚生労働省の令和9年度概算要求が出そろいました。そのなかに、リハビリテーション専門職の名称がどう使われているかを国が調べるという新規事業が入っています。あわせて介護分野でのリハ職の不足感のデータと、離床を伴わないリハの記載頻度を明確にした疑義解釈も出ました。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てであり、確定した将来予測ではありません。

2026年8月 公表(令和9年度概算要求/医政局)

01国が「リハビリテーション専門職の名称使用の実態」を調べる|新規1億8,500万円

厚生労働省が令和9年度(2027年度)予算の概算要求を公表しました。概算要求は各省庁が財務省に「これだけ使いたい」と要求する段階で、実際にいくらつくかは年末の予算編成で決まります。その医政局の要求のなかに、これまでなかった新規事業が入っていました。「適切な診療・施術を受けるための機会の選択等に資する広報・実態調査等事業」で、要求額は1億8,500万円(前年度は0円)です。

事業の説明はこう書かれています。「国民が、安心・安全に適切な医業類似行為及びリハビリテーション並びにオンライン診療といった診療・施術を受けるための機会を選択できるよう広報を行うと共に、オンライン診療やリハビリテーション専門職の名称使用の実態及び施術所の広告の実態についての調査等を行う」。

注目したいのは、「リハビリテーション」が「医業類似行為」と並べて書かれている点です。医業類似行為とは、あん摩マツサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復など、医師の医業とは別に法律で位置づけられている行為を指します。そして調査の対象として名指しされているのが、「リハビリテーション専門職の名称使用の実態」でした。

リハビリテーションの業務が免許の独占になっていないことは、現場では以前から知られているとおりです。ただ、それが決め忘れではなく明示的な判断だったことは、法律の施行時の通達に残っています。1965年(昭和40年)10月23日の厚生事務次官通達(発医第217号)は、業務に関する事項としてこう書いています。「業務の全部を免許取得者の独占分野にすることは必ずしも実情にそぐわないことからして、その業務を免許取得者の独占とはしないが、理学療法士又は作業療法士でない者が、理学療法士若しくは作業療法士又はそれにまぎらわしい名称を用いることは、禁止し」。

理由も2点書かれています。ひとつは「理学療法士又は作業療法士の免許取得者以外の者が行なつても必ずしも危害を生ずるおそれのないものもあり」。もうひとつは「業務従事者に対する需要の現状からみても」です。同じ通達の冒頭には、当時わが国にリハビリの専門技術者の資格制度がなく、それが普及発達を阻害していたという制定の趣旨も記されています。人が足りないなかで普及を優先し、守るのは名称だけにする——61年前に選ばれた設計が、いまも続いています。

なお「開業できない」という言い方は、少し粗いかもしれません。同法が定めているのは、理学療法を「医師の指示の下に」行うこと(第2条)と、診療の補助として行えること(第15条)です。柔道整復師法などにある施術所の開設規定はこの法律に置かれていない一方、有資格者が自費のサービスを事業として行うこと自体を禁じる条文があるわけでもありません。境界は、名称・広告・提供内容の組み合わせで決まります。今回の調査が見ようとしているのは、まさにその境界の現状だと読めます。

🔭 起こりそうな変化

まず前提として、これは要求の段階です。予算がついたわけではなく、実際に事業が動くかどうかは年末の予算編成で決まります。新規事業は削られることもあります。そのうえで並べると、1965年に「業務は独占にしない、守るのは名称だけ」と決めた国が、61年たって、その名称が実際にどう使われているかを調べたいと言い出した——という形になります。当時の理由は「危害のおそれ」と「需要の現状」でした。どちらの前提も、61年で変わっている可能性があります。もうひとつ注目したいのは、この調査が「有資格者を守る」ためではなく「利用者が適切な施術を選べるようにする」ために組まれている点です。その視点で実態が並べられたとき、名称独占という設計が利用者にとってどう機能しているかが見えることになります。結果がどちらに転ぶかは読めませんが、資格の価値の扱いに直結する調査だと思います。

資格の価値と将来の構造を整理した記事はこちら

PT・OT・STが知っておきたい、働き方の将来リスク4つ

2026年8月28日 開催(第263回 社会保障審議会 介護給付費分科会)

02介護分野でのリハ職の不足感は39.7%|訪問介護員82.9%との差が意味すること

厚生労働省は8月28日、第263回社会保障審議会介護給付費分科会を開催しました。令和9年度介護報酬改定に向けて、介護人材の確保と処遇改善などが議題です。資料1に、職種別の従業員の過不足状況が掲載されています。出典は令和7年度介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)です。

PT・OT・ST等(n=2,577)の不足感は39.7%でした。内訳は「大いに不足」6.0%、「不足」10.4%、「やや不足」23.3%で、この3つを合わせた数字です。一方で「適当」と答えた事業所が59.1%と、6割近くを占めています。

他職種と並べると位置づけがはっきりします。訪問介護員82.9%、介護職員69.8%、看護職員44.8%、PT・OT・ST等39.7%、介護支援専門員37.0%、生活相談員26.2%、サービス提供責任者30.7%。全体では65.8%でした。介護の現場で「足りない」と言われている職種のなかで、リハ職は下から3番目です。

同じ資料には、令和7年度補正予算による「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」(1,920億円)の内容も掲載されています。この事業の対象は「介護職員のみならず、看護職、リハ職、ケアマネ、事務職等の介護現場で働く幅広い職種の方々」と明記されており、賃上げ支援の額は介護従事者で常勤換算1人あたり月額1.0万円相当とされています。

🔭 起こりそうな変化

不足感が低いことは、働く側にとって素直に喜べる話ではありません。人が足りない職種ほど、賃金や条件で引き止める必要が生じるからです。介護分野では、リハ職は「おおむね足りている」と見られている。ここは転職で条件交渉をするときの前提として、押さえておいて損はないと思います。一方で、賃上げ支援の対象にリハ職が明記されている点は見落とされがちです。自分の職場がこの補助金を受けているかどうかは、確認してみる価値があります。

給与の実データを整理した記事はこちら

PT・OT・STの給料は本当に低い?平均年収・中央値・時給をデータで解説

2026年9月2日 発出(保険局医療課 事務連絡)

03疑義解釈その12|離床を伴わないリハの「理由の記載」は毎日でなくてよい

厚生労働省保険局医療課は9月2日、令和8年度診療報酬改定に関する疑義解釈資料(その12)を事務連絡として発出しました。リハビリテーション関係では3つの問答が示されています。

実務に直結するのは問13です。対象は「H000」心大血管疾患リハビリテーションの注8等に規定される「離床を伴わずに実施するリハビリテーション」で、さらに留意事項通知の特定の患者に該当しない患者のうち「ウ」の要件に該当するものに限られます。この場合、「当該患者がベッド上からの移動が困難な医学的理由、長時間のリハビリテーションが必要な理由及び訓練内容」を診療録と診療報酬明細書の摘要欄に記載することとされており、この記載を毎日行う必要があるかが問われました。

回答は「診療報酬明細書への記載は毎月行うこと。診療録への記載は、状態に変化が生じた際には随時行い、状態に変化が生じない場合であっても、少なくとも月1回は記載すること」でした。

ここは読み違えると危ないところなので、範囲をはっきりさせておきます。頻度が示されたのは、上に挙げた「3つの理由・内容」の記載についてだけです。リハビリテーションの実施記録そのものや、日々の診療録の記載が不要になるという回答ではありません。疾患別リハビリテーション料の算定にあたって必要な記録は、この事務連絡とは別に従来どおり求められます。あくまで、同じ理由を毎日繰り返し書く必要はない、という限定された内容です。

残る2問はがん患者リハビリテーション料に関するものです。問11では、一連のがん治療を行っている期間に再入院時や手術後等でリハビリテーション総合計画評価料1を再度算定する場合、「2回目以降の場合」として算定すると示されました。問12では、がん患者リハビリテーション料の要件について、同一医療機関でリハビリテーション総合計画評価料1を一度算定していれば要件を満たすとされ、再算定は不要であることが明確になりました。

🔭 起こりそうな変化

改定から3か月以上たっても疑義解釈が続いているのは、それだけ現場の運用が固まっていないということでもあります。今回の問13は該当する患者が限られるため、多くの方にとってはすぐ効く話ではないかもしれません。ただ、算定要件の記載事項について「毎日か、月1回か」が公式に示された例として押さえておく価値はあります。自分の職場の運用を見直すときは、まず対象がこの要件に当てはまるかを確認してから、施設基準や算定要件の担当者と一緒に判断するのが安全だと思います。

記録や書類の負担について整理した記事はこちら

PT・OT・STが抱えるリアルな職場の悩み5選|書類・単位・人間関係

2026年8月 公表(令和9年度概算要求の主要事項)

04「攻めの予防医療」は302億円→509億円の要求へ、リハビリも項目に明記

同じ令和9年度概算要求の主要事項資料では、「攻めの予防医療」が重点分野として位置づけられています。要求額は509億円で、令和8年度当初予算の302億円から増額の要求です(うち投資枠187億円)。

この重点分野の項目のひとつとして、「心身機能の向上のみならず、日常の生活動作の改善、社会参加の促進、国民の健康の増進にもつなげるための切れ目ない適切なリハビリテーションの提供」が明記されています。がん検診や特定健診、国民皆歯科健診、認知症対策などと並ぶ形です。

注意しておきたいのは、509億円という数字は「攻めの予防医療」全体の要求額であり、リハビリテーション単独の予算ではないという点です。リハビリはこの枠のなかの一項目として書かれています。

背景には、2026年7月23日に公表された施策パッケージ「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療 厚生労働省関係施策~」があり、概算要求の資料もこれを参照するよう記載しています。前号で取り上げた日本理学療法士協会の13省庁への要望書でも、内閣官房へ「攻めの予防医療におけるリハビリテーション専門職の活用」が要望されていました。

🔭 起こりそうな変化

予算がつく段階ではなく、要求の段階です。年末の予算編成で削られることもあります。ただ、国の重点分野の説明文にリハビリテーションが名指しで入っていること自体が、前号の13省庁要望と地続きの動きです。予防・健康づくりの文脈でリハ職が呼ばれる場面は、病院や施設の外に広がっていく可能性があります。数年単位の話として、頭の片隅に置いておく程度でよいと思います。

予防・地域の領域で働く選択肢はこちら

地域包括支援センターでリハビリ職は働けるのか|現場の声から考える

今号を通して見えること

今週の材料はほとんどが国の来年度予算から出ています。そこにリハ職が2つの顔で登場しました。ひとつは「活用したい人材」としての顔で、攻めの予防医療の重点項目に名前が入っています。もうひとつは「実態を把握すべき対象」としての顔で、名称の使われ方が調査されようとしています。

もうひとつ押さえておきたいのが、介護分野でのリハ職の不足感39.7%という数字です。訪問介護員の82.9%と比べると、この分野では「おおむね足りている」と見られていることになります。職域を広げる話と、需給が緩いという現実。どちらも同じ週に出てきた事実で、働く場所を選ぶときの前提として、両方を知っておくのが公平だと思います。

自分のキャリアに引きつけて読む

今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。

📚

制度が変わっても、動けるかは準備次第

働ける場所や役割が広がっても、「制度上は可能になった」で止まることは少なくありません。臨床の学び直しも、臨床の外で使えるスキルも、いまはオンラインで学べます。

学び方を見てみる ›
🔍あなたに合う転職サービスは?1分で診断5つの質問に答えるだけ・登録不要

業界ニュースまとめは毎週更新しています。
次号もキャリアに関わる動きを厳選してお届けします。