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保育所でPT・OT・STが働くには「保育士とみなす特例」の要件と求人の実際

最終更新:2026年8月21日

2026年4月から、保育所で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を1人に限り保育士とみなすことができるようになりました。小児・発達領域に関心のあるリハビリ職にとっては、新しい勤務先が制度上開かれたことになります。この記事ではこども家庭庁・文部科学省の通知の原文をもとに要件を正確に整理し、あわせて実際の求人数まで確認しています。

先に結論

  • PT・OT・STは、資格を持っていること自体が要件。よく誤解される「5年以上の経験」は別の区分の人にかかる条件です
  • もう1つの要件「子育てに関する知識及び経験」は、保育所等での勤続3年以上、または子育て支援員研修の修了。研修の受講料は原則無料です
  • ただし担うのは保育の仕事。リハビリテーションを提供するポストが新設されたわけではありません
  • 求人はまだ少なく、保育園・幼稚園のリハ職求人は全国で30件前後2026年8月21日時点)

2026年4月に何が変わったのか

2026年3月16日に公布され、4月1日から施行された「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の一部を改正する内閣府令」(令和8年内閣府令第10号)により、保育所において理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等を、1人に限り保育士とみなすことが可能になりました。

この「保育士とみなす」特例は、従来は保健師・看護師・准看護師にのみ認められていたものです。今回リハビリ専門職まで対象が広がった形になります。

補足:「保育士とみなす」とはどういうことか

保育所には、子どもの年齢ごとに必要な保育士の人数が定められています(乳児おおむね3人に1人、1歳以上3歳未満おおむね6人に1人、3歳以上4歳未満おおむね15人に1人、4歳以上おおむね25人に1人、保育所1つにつき最低2人)。この必要な保育士の数を数えるときに、1人分としてカウントできる——それがこの特例です。リハビリテーションを提供する専門職ポストが新設された、という話ではありません。

要件①:対象になるのは誰か(ここが誤解されやすい)

通知では、対象者を「特定理学療法士等」と呼び、次のいずれかに該当する人としています。

理学療法士(PT)

資格を持っていることが要件

作業療法士(OT)

資格を持っていることが要件

言語聴覚士(ST)

資格を持っていることが要件

心理担当職員

大学(短大を除く)または大学院で心理学を専修する学科等を修めて卒業し、個人及び集団心理療法の技術を有する者、またはこれと同等以上の能力を有すると認められる者

障害児の療育に関する知識及び経験を有する者

障害児の療育の指導を行う業務に5年以上従事した経験を有する者。具体的には、障害児通所支援等の業務経験があり、かつ児童発達支援センターや保育所等訪問支援事業所などで他機関への障害児支援の助言等の業務に5年以上従事していたことを指す

⚠️ よくある誤解

「5年以上の経験が必要」と読まれがちですが、5年要件がかかるのは最後の区分だけです。PT・OT・STは、資格を持っていることそのものがこの区分を満たします。療育の経験年数を求められているわけではありません。

要件②:「子育てに関する知識及び経験」をどう満たすか

上のいずれかに該当したうえで、「子育てに関する知識及び経験を有する」ことが別途必要です。通知はこれを次のように整理しています。

ルートA

保育所等での勤続年数が3年以上

すでに保育所等で働いた経験がある人は、こちらで満たせます。

ルートB

子育て支援員研修(地域保育コース)等を修了

ルートAに該当しない場合でも、この研修を修了すれば要件を満たすものとして扱われます。

通知では、子育て支援員研修事業実施要綱に定める地域保育コース、その他都道府県知事または市町村長が認める研修を修了した場合に、「子育てに関する知識及び経験を有する」こととして取り扱って差し支えない、とされています。

💡 子育て支援員研修は受講料が原則無料

実施主体は都道府県で、委託を受けた法人が運営しています。東京都の例では、研修受講料は原則として無料とされ、テキスト代・交通費・昼食代・健康診断費用(見学実習を行う場合のみ)・オンデマンド受講のための物品や通信費用が自己負担と案内されています。

募集時期は自治体ごとに異なります。「〇〇県 子育て支援員研修」で検索すると各自治体の案内が見つかります。年度の前半に募集していることが多く、東京都の令和8年度分は9月下旬から受講クラスごとに順次開始と案内されています。

実際にはどう働くのか

通知は、保育を行うときの体制についても具体的に定めています。

保育士と合同の組・グループを編成する

1人で子どもを担当するのではなく、保育士と組んで、原則として同一の保育室等で保育を行うことが求められます。「保育士による支援を受けることができる体制」を確保することが条件です。

支援する保育士には目安がある

支援を行う保育士は、その保育所での勤続年数がおおむね3年以上で、かつ常勤であることが望ましいとされています。その保育士が休暇を取る際の代替者も同様が望ましい、と書かれています。

研修の機会が確保される

保育所の長は、保育に関する資質を向上させるため、各種の研修に参加する機会を確保するよう努めることとされています。未経験でいきなり放り出される想定ではありません。

他の職員に負担が偏らないよう配慮される

保育所の長は、特定理学療法士等以外の職員に業務の負担が過剰に偏らないよう、業務効率化や適切な業務分担を行うよう配慮することとされています。

求人はどれくらいあるのか(2026年8月21日時点)

制度ができたことと、実際に働き口があることは別の話です。求人サイトのジョブメドレーで、施設ジャンルを「保育園・幼稚園」に絞ったときのリハビリ職の求人数を実際に数えました。

職種保育園・幼稚園の求人数
理学療法士(PT)36件
作業療法士(OT)37件
言語聴覚士(ST)28件

※ ジョブメドレーの施設ジャンル別ページで2026年8月21日に確認した該当件数です。1つの求人サイトの数字であり、全国のすべての求人を示すものではありません。数字は変動します。

正直に言えば、多い数字ではありません。同じジョブメドレーで理学療法士の求人は東京都だけで3,000件を超えます。それと比べると、保育園・幼稚園という勤務先はまだごく限られた選択肢です。特例が「1人に限り」である以上、1つの保育所が採用するのは最大1名ですから、求人が急増するとは考えにくい構造でもあります。

給与の目安としては、掲載されている言語聴覚士の求人では正職員で月給23万〜25万円程度、パート・アルバイトで時給1,350〜2,000円程度の例が見られました(2026年8月21日時点の掲載例)。病院やクリニックの水準と比べて、条件面で有利になるとは限りません。

検討するときに押さえておきたい3つのこと

1. 担うのは「保育」であって「リハビリ」ではない

制度上は保育士の人数として数えられる立場です。専門性は保育の中で活かす形になります。「小児リハビリの専門職として働きたい」という希望であれば、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援といった障害児支援の領域のほうが、専門職としてのポストは見つけやすいのが実際のところです。

2. この通知は「技術的助言」である

通知の末尾には、地方自治法第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言である旨が明記されています。運用の細部は自治体によって解釈が分かれる可能性があります。実際に検討する際は、勤務を希望する地域の自治体窓口に確認するのが確実です。

3. 「1人に限り」の枠は看護師等と併用できる

従来からある看護師等の特例と併用することは可能です。ただしその場合、看護師等を支援する保育士と、PT・OT・ST等を支援する保育士は別の人である必要があります。保育所側にとっては相応の体制づくりが必要になる、ということでもあります。

よくある質問

Q. PT・OT・STが保育所で働くのに、5年の経験は必要ですか?

A. 必要ありません。ここは誤解されやすいところです。通知が定める対象者は「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理担当職員、または障害児の療育に関する知識及び経験を有する者であって障害児の療育の指導を行う業務に5年以上従事した経験を有するもの」のいずれかに該当する人です。「5年以上」がかかるのは最後の「障害児の療育に関する知識及び経験を有する者」だけで、PT・OT・STは資格を持っていること自体が要件を満たします。ただし、これとは別に「子育てに関する知識及び経験を有する」ことが必要です。

Q. 「子育てに関する知識及び経験」は、どうすれば満たせますか?

A. 原則は、保育所等における勤続年数が3年以上あることです。これに該当しない場合でも、子育て支援員研修の地域保育コース、その他都道府県知事または市町村長が認める研修を修了すれば、要件を満たすものとして扱われます。つまり保育所での勤務経験がなくても、研修を受ければ道は開かれています。

Q. 子育て支援員研修は有料ですか?

A. 受講料は原則として無料です。実施主体は都道府県で、委託を受けた法人が運営しています。たとえば東京都の場合、研修受講料は原則無料とされ、テキスト代・交通費・昼食代・健康診断費用(見学実習を行う場合のみ)・オンデマンド受講のための物品や通信費用が自己負担となっています。募集時期は自治体ごとに異なるため、「〇〇県 子育て支援員研修」で検索して各自治体の案内を確認してください。

Q. 保育所ではリハビリの仕事をするのですか?

A. いいえ。この特例は「保育士の数の算定にあたって、1人に限り保育士とみなすことができる」というものです。つまり保育を行う職員として数えられる制度で、リハビリテーションを提供するポストが新設されたわけではありません。実際に行うのは保育であり、その際は保育士と合同の組・グループを編成し、原則として同一の保育室等で保育を行うことが求められます。専門性は保育の中で活かす形になります。

Q. 保育所に1人しか置けないのですか?

A. この特例で保育士とみなせるのは1人までです。ただし、従来から可能だった看護師等を保育士とみなす特例と併用することはできます。その場合、看護師等を支援する保育士と、PT・OT・ST等を支援する保育士は別の人にする必要があります。

Q. 保育所以外にも対象はありますか?

A. あります。小規模保育事業所(小規模保育事業A型・B型を行う事業所に限る)、事業所内保育事業所、認定こども園についても、関連法令の改正により同様の扱いとされています。

出典