業界ニュース

【2026年10月第3週】業務効率化に取り組む病院を国が認定へ、リハ職の記録時間も目標に

業務効率化・勤務環境改善に取り組む病院を厚生労働大臣が認定する仕組みが、法律で決まりました。補助事業の目標の例には「リハ職種の記録作成等の時間の減」も入っています。あわせて、通所リハの中身が筋力・歩行に偏っているという厚労省のデータ、退院前カンファレンスへの参加、刑務所で働く作業療法士の話を、一次資料つきで整理しました。2〜4本目は対応案や取材の段階です。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てです。

2026年5月29日 成立・6月5日 公布(健康保険法等の一部を改正する法律)

01業務効率化に取り組む病院を厚生労働大臣が認定へ|補助事業の目標の例に「リハ職種の記録作成等の時間の減」

病院の業務効率化を、国が「認定」する仕組みができます。

今年5月に成立した健康保険法等の改正法に、医療機関の業務効率化と勤務環境改善についての項目が入っていました。

法律で決まったこと

  • 業務効率化・勤務環境改善に積極的・計画的に取り組む病院を、厚生労働大臣が認定する。認定された病院は、そのことを表示できる
  • 地域医療介護総合確保基金に、業務効率化・勤務環境改善を支援する新しい事業を設ける
  • 都道府県の医療勤務環境改善支援センターが、労務管理に加えて、業務効率化の助言・指導も行うよう努める
  • 病院・診療所の管理者は、勤務環境の改善に加えて、業務効率化にも取り組むよう努める

施行は2027年4月1日(一部は2027年1月1日)です。認定の詳しい要件は、これから決まります。

リハ職の「記録の時間」も目標の例に

制度に先立って、今年度はICT機器の導入を補助する事業が始まっています。1施設あたり上限8,000万円で、対象は病院です。

ICT(Information and Communication Technology)は「情報通信技術」のこと。この事業では、職員同士で連絡をとるスマートフォンや業務用のインカム(無線の通話機)、患者さんの見守り機器、生成AI(文章などを自動で作るAI)を使った文書作成の支援やAI問診などが対象の例に挙がっています。

補助を受ける病院は、定量的な目標を入れた「業務効率化計画」を作ります。厚労省が示した目標の例に、リハ職の項目がありました。

(その他コメディカル部門)・リハ職種の記録作成等の時間の減 ・リハ職種による入院後早期リハ介入率の増

=記録の時間を減らし、入院後に早くリハを始める。リハ職も業務効率化の対象に入っている

ほかにも、医師の文書作成時間や、看護記録の時間を減らすことなどが例に挙がっています。

認定の要件や、認定された病院が受けられる支援の中身はまだ決まっていません。補助事業の目標は「例」で、どの部門で何を目標にするかは病院ごとに決めます。

🔭 起こりそうな変化

リハ職の残業は、記録や書類で発生しやすいところです。記録の時間が減れば、そのぶん患者さんに向き合える時間が増えるかもしれません。音声入力やAIによる文書作成の支援など、こうした機器や仕組みの使い方を今のうちに知っておくことは、どの職場に行っても無駄にならないはずです。認定の仕組みが動き出せば、「業務効率化に取り組んでいる病院」が外からも分かるようになります。働く場所を選ぶときの、新しい目安のひとつになるかもしれません。要件がどう決まるか、注視していきたいところです。

記録の時間は、見学で確かめられること

施設見学・面接の逆質問で聞くこと|PT・OT・STが職場を見極める質問と聞き方 →

2026年10月14日 開催(第270回 社会保障審議会 介護給付費分科会)

02通所リハの中身は筋力・歩行に偏り、ADL・IADLは一部|生活行為向上リハの算定率は1.6%

通所リハで行われているリハビリの中身が、来年度の介護報酬改定の論点になりました。

厚労省が、介護保険のデータ(LIFE)を集計した結果を示しています。

リハビリテーション計画の内容は、リハビリテーションマネジメント加算の算定の有無に関わらず、筋力増強訓練、歩行訓練が多く、ADL訓練やIADL訓練は少ない。

=計画も、実際に行った内容も、筋力と歩行が中心。生活の動作や家事などは一部にとどまる

加算の算定率

  • リハビリテーションマネジメント加算(ロ) 事業所の39.0%
  • リハビリテーションマネジメント加算(イ) 14.6%、(ハ) 10.5%
  • 生活行為向上リハビリテーション実施加算 事業所の1.6%(利用者では0.1%)

生活行為向上リハは、排泄・入浴・調理・買い物・趣味など、生活の中の行為に向けたリハビリを評価する加算です。算定が難しい理由として、専用の計画を作る時間がとれないことが挙げられています。

厚労省が示した対応案

  • リハビリ会議で、居宅での活動や参加の状態を共有し、ADL・IADLなどを含む計画を立てることを、リハマネ加算の要件として明確にする
  • リハビリ会議で目標の達成状況を報告し、必要に応じて計画を見直す
  • 生活行為向上リハは、専用の計画を別に作らず、通所リハの計画の中に書けばよいことにする

分科会で示された「対応案」の段階で、決まったことではありません。算定率は令和7年10月サービス提供分の集計です。

🔭 起こりそうな変化

家の中の動作や、家事、外出。生活期のリハビリが本来向き合う部分が、報酬の要件として求められる方向です。病院で機能を中心に見てきた人ほど、生活の動作や家での活動を組み立てる力は、これから在宅や通所の分野で強みになっていきそうです。生活行為向上リハの計画の手間が減れば、作業療法士が得意とする関わり方が、通所リハの中で広がる可能性もあります。今学んでおくことは、将来やりたい分野につながるかもしれません。

病院のやり方が、在宅でそのまま通じない理由

病院から訪問リハへの転職|体験者のリアルな声と、転職で押さえたいコツ →

2026年10月14日 開催(第270回 社会保障審議会 介護給付費分科会)

03退院前カンファレンスに通所リハが参加すると、利用開始が早い|退院時共同指導加算を老健からの退所にも

病院から家に帰るときの、つなぎの話です。

令和6年度の改定で、通所リハの「退院時共同指導加算」ができました。退院前のカンファレンスに通所リハの職員が参加して、病院と一緒に指導した場合の評価です。

参加している事業所は多くない

  • 医療機関の退院前カンファレンスに参加している事業所 25.8%
  • 介護老人保健施設の退所前カンファレンスに参加している事業所 40.8%

参加していたほうが、退院・退所から通所リハの利用開始までの期間が短かったという調査結果も示されています。

対応案

今は医療機関からの退院だけが対象ですが、介護老人保健施設と介護医療院からの退所者も対象に加える案が示されました。

「対応案」の段階で、決まったことではありません。調査は令和7年度老人保健健康増進等事業によるものです。

🔭 起こりそうな変化

病院のリハ職と、在宅のリハ職が顔を合わせる場面が、少しずつ評価されるようになってきています。退院のときに情報がつながれば、家に帰ってからのリハビリが早く始められます。病院にいても在宅にいても、相手側の仕事を知っておくことは、連携の場面で必ず役に立ちます。制度がどこまで広がるか、注目していきたいところです。

前の号:退院後の就労支援と、障害福祉のサービス

【2026年10月第2週】介護分野の賃上げ、リハ専門職が最も低い →

2026年10月15日 公開(PT-OT-ST.NET 現地取材)

04刑務所で働く作業療法士は全国に20名程度|高齢の受刑者の「機能向上作業」と、出所後への課題

刑務所の中で、作業療法士が働いています。

リハ職向けの情報サイトPT-OT-ST.NETが、府中刑務所で看守長と作業療法士に取材した記事を公開しました。

刑務所での関わり方

  • 対象は、おおむね70歳以上で、認知症や身体の障害で自立が難しい受刑者
  • 運動や脳トレなどの時間を設け、作業を通じて機能の維持を図る「機能向上作業」を行う
  • 手すりやトランスボードのついた訓練用の浴槽もある
  • 理学療法士が週1回、外から訪問して体操教室を行っている

目的は、病院のリハビリとは違います。ほかの受刑者と同じように作業をして刑期を終えること、そして出所後の生活につなげることです。

法務省の白書によると、機能向上作業は2020年度から府中刑務所で始まり、2023年度には11の施設で同様の取り組みが行われています。

取材で語られた課題

  • 刑務所に所属する作業療法士は全国で20名程度、1施設に1〜2名ほど
  • 出所後に身寄りや住まい、仕事がなく、支援につながらない人が多い
  • 地域の受け入れ先とどうつなぐかが課題

作業療法士の人数などは取材記事の中の発言によるもので、法務省の統計ではありません。

🔭 起こりそうな変化

9月第1週号で紹介した理学療法士協会の要望書でも、受刑者への関わりが挙げられていました。人数はまだ少ないですが、刑務所という場所でもリハ職の専門性が求められ始めています。出所後の生活を考えると、地域のリハ職や福祉とつながる場面も増えていきそうです。身体と生活の両方を見られるのはリハ職の強み。今の臨床の経験は、こうした場所でも無駄にならないはずです。

前の号:法務省を含む13の省庁への要望書

【2026年9月第1週】リハ職の「職域」と「数」が動いた1週間|PT協会13省庁要望・養成課程の見直し →

今号を通して見えること

今号の1本目と2本目は、どちらもリハ職の時間の使い方の話でした。病院は記録の時間を減らす計画を求められ、通所リハは筋力と歩行に偏った中身を、生活の動作や家での活動に向けるよう求められています。

記録や書類に追われる時間が減って、そのぶん生活に向き合う時間が増える。2つの制度は、同じ方向を向いています。3本目の退院前カンファレンスも、病院と在宅をつなぐ時間をどう作るかという話です。

そして4本目の刑務所の作業療法士。人数はまだ少なくても、身体と生活の両方を見られる専門職が求められる場所は広がっています。どれもまだ途中の段階ですが、課題はあっても職域は広がりつつある。制度の動きを、引き続き追いかけていきます。

自分のキャリアに引きつけて読む

今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。

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