【2026年9月第3週】リハ職を
「どこに置くか」が動いた週
日本学術会議がPT・OTを地方自治体に配置するよう提案しました。同じ文書には需要の約1.5倍の供給という推計も載っています。一方で介護の現場では、国が推す一体的取組の算定が1割前後にとどまっていました。来年度の介護報酬改定に向けた意見交換会も始まっています。あわせて、脳卒中リハのガイドラインが10年ぶりに改訂され、PT・OT・ST別の要点が公開されました。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てであり、確定した将来予測ではありません。
2026年8月12日 公表(日本学術会議 健康・生活科学委員会)
01日本学術会議が「PT・OTを地方自治体に配置を」|同じ文書に需要の約1.5倍という推計
日本学術会議の健康・生活科学委員会(ヘルスケア人材共創に向けた看護学分科会)が、見解「人口減少・人口偏在社会に求められるヘルスケア人材-需要と供給のバランス・地域偏在の課題解決に向けた各医療専門職の役割機能を段階的に拡張する方策-」を公表しました。日付は2026年8月12日です。
リハ職の「役割拡大」という言葉自体は、ここ数年くり返し聞かれてきたものだと思います。今回の見解が具体的なのは、置き場所まで書いている点です。提案にはこうあります。「看護師に留まらず、リハビリテーション職種、特に理学療法士・作業療法士の役割機能の拡大を図る。プライマリ・ケアにおける身体機能、生活機能及び社会参加の中核職種として地方自治体に配置し、地域の診療所との連携を推進する」。
職種ごとの呼び方も割り当てられています。作業療法士を「生活機能及び社会参加の中核職種」、理学療法士を「身体活動・運動機能及び予防的介入の中核職種」と位置づける、という書き方です。
モデルとして挙げられているのは英国です。「英国では、プライマリ・ケアネットワークに理学療法士・作業療法士を直接配置し、家庭医と連携したケアを提供している。理学療法士は『ファーストコンタクト理学療法士』として医師を介さず筋骨格系疾患・フレイル・慢性疾患に自律的に対応し、作業療法士は外来段階から生活機能支援と予防介入を担う」と記載されています。
一方で、同じ見解には需給の推計も載っています。人口10万人当たりの就業者数は、2025年時点で理学療法士163人・作業療法士86人。これが2040年には理学療法士278人・作業療法士141人に達し、主要5か国において同等あるいは上位水準になる見込みとされています。そして「需要に対しては約1.5倍の供給が見込まれている」と書かれています。
現状の課題も明記されています。「両職種とも依然として医療機関内の診療報酬体系への依存が大きく、外来段階からの予防的・生活機能的介入をプライマリ・ケアの文脈で担える仕組みは十分でない」。つまり、提案されている働き方を実際に置く器が、いまの制度にはないということです。
公式ページ日本学術会議 提言・報告等【見解】一覧
🔭 起こりそうな変化
同じ文書に「地方自治体の中核職種に」という提案と「需要の約1.5倍の供給」という推計が並んでいるのは、偶然ではないと思います。増える人材をどこに置くかという問いへの答えが、地方自治体でありプライマリ・ケアだ、という構成になっています。学術会議の見解に法的な拘束力はなく、明日から何かが変わるものではありません。ただ、前号で取り上げた概算要求や13省庁要望と方向が揃っていること、そして「医師を介さず」という英国の具体例が名指しで入っていることは、覚えておく価値があると思います。
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2026年9月3日 開催(第264回 社会保障審議会 介護給付費分科会)
02リハ・栄養・口腔の「一体的取組」、通所リハの算定は10.3%どまり
厚生労働省は9月3日に第264回社会保障審議会介護給付費分科会を開催しました。資料4「口腔・栄養、一体的取組」に、リハビリテーション・機能訓練、栄養、口腔の一体的取組に関する加算の算定状況が掲載されています。出典は介護給付費等実態統計(令和7年11月審査分)などで、老健局老人保健課が作成したものです。
加算があること自体は現場ではすでに知られているとおりです。新しいのは、どれくらい算定されているかという数字のほうでした。通所リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算(ハ)は、請求事業所7,655のうち788事業所で、算定率は10.3%(事業所ベース)です。
サービスごとに対象となる加算が違うので、数字を横並びで比べることはできません。それぞれの算定率(事業所ベース)は次のとおりです。
介護予防通所リハビリテーション(一体的サービス提供加算)3.5%。介護老人保健施設(リハビリテーションマネジメント計画書情報加算Ⅰ)16.9%。介護老人福祉施設と地域密着型介護老人福祉施設(個別機能訓練加算Ⅲ)は6.3%と4.6%。介護医療院は18.4%で、ここだけ加算の名前がつかず、理学療法・作業療法・言語聴覚療法それぞれの算定要件のなかに「注」として置かれた評価を集計したものです。
回数ベースで見るとさらに小さくなります。通所リハのリハビリテーションマネジメント加算(ハ)は1.3%、介護老人福祉施設の個別機能訓練加算(Ⅲ)は0.2%です。事業所としては届け出ていても、実際に算定している回数は限られている、という読み方ができます。
🔭 起こりそうな変化
国が旗を振っている取組でも、現場での算定は1割前後にとどまっています。理由はこの資料からは読み取れませんが、他職種との同時実施が要件に絡むこと、書類が増えることは想像がつきます。来年度の改定では、この算定率の低さ自体が論点になる可能性があります。要件が緩和されるのか、それとも単位数で誘導されるのか。自分の職場が算定しているかどうかは、改定の影響を受ける側かどうかの目安になります。
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2026年9月10日 開催(第265回 社会保障審議会 介護給付費分科会)
03令和9年度介護報酬改定の意見交換会が開始、リハ職3団体は2回登壇する
9月10日の第265回分科会から、令和9年度介護報酬改定に向けた意見交換会が始まりました。資料1の実施要領によれば、これは従来の「団体ヒアリング」を発展的に見直したもので、社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)の施行により令和9年度から制度改正が行われることも踏まえた変更とされています。
テーマは4つに分かれています。①介護系居宅サービス等、②居住系・施設系サービス等、③医療系サービス、④中山間・人口減少地域関係です。初回の9月10日はテーマ①で、全国ホームヘルパー協議会など11団体が意見を述べました。
リハビリテーション専門職団体協議会(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会)は、第266回のテーマ②と、第267回のテーマ③の両方に名前が入っています。つまり同協議会は、居住系・施設系と医療系の2回に分けて意見を述べる予定です。
第267回のテーマ③には、全国リハビリテーション医療関連団体協議会(日本リハビリテーション医学会、日本リハビリテーション病院・施設協会、日本訪問リハビリテーション協会、全国デイ・ケア協会)も入っています。訪問リハ・通所リハが議題になる回です。
🔭 起こりそうな変化
団体が意見を述べること自体は毎回のことですが、提出資料は誰でも読めます。自分の職種の団体が何を要望として出したかを、改定が決まったあとの解説記事ではなく、いま原文で読めるということです。訪問リハ・通所リハで働いている方は、テーマ③の回の資料に目を通しておくと、来年度に何が変わりそうかを早い段階でつかめます。次号以降、リハ職団体の提出資料が出たら取り上げる予定です。
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2026年8月28日 公表/2026年9月9日 中医協へ提出
04令和7年度の概算医療費は49.2兆円|受診日数は減り、1日当たりの単価が上がっている
厚生労働省が「令和7年度 医療費の動向」を公表しました。公表は8月28日で、9月9日の中央社会保険医療協議会に参考資料として提出されています。概算医療費は49.2兆円で、前年度から約1.3兆円の増加、伸び率は2.6%でした。
医療費が増え続けていること自体は、あらためて言うまでもないと思います。押さえておきたいのは中身の動き方です。受診延日数の伸び率は▲0.7%、一方で1日当たり医療費の伸び率は3.3%でした。患者が医療機関に来る回数は減っているのに、1日あたりの単価が上がっている、という構造です。
診療種類別の内訳は、入院19.6兆円(構成割合39.8%)、入院外16.5兆円(33.5%)、歯科3.5兆円(7.2%)、調剤8.8兆円(17.8%)。伸び率は入院2.3%、入院外1.6%、歯科3.5%、調剤3.9%です。受診延日数は入院▲0.5%、入院外▲1.6%と、どちらも減っています。
なお、この資料にリハビリテーション単独の集計は含まれていません。概算医療費は診療種類別(入院・入院外・歯科・調剤)までの区分で、診療行為別の内訳は別の統計になります。
🔭 起こりそうな変化
受診回数が減って単価が上がるという形は、限られた回数のなかで濃い医療を提供する方向に現場が動いている、とも読めます。リハビリでいえば、同じ患者に長く関わるより、期間内にどれだけ変化を出せるかが問われやすくなる方向です。この数字そのものは来年度の改定の議論の前提になります。医療費が伸びているという事実は、報酬を引き上げる根拠にも、抑制する根拠にも使われます。どちらに使われたかは、改定の中身が出たときに確かめられます。
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2026年8月27日 公表(米国心臓協会/米国脳卒中協会)
05脳卒中リハのガイドラインが10年ぶり改訂、PT・OT・ST別の要点が公開された
脳卒中のリハビリで、いつから、どのくらいの強さで動かすか。その目安が10年ぶりに更新されました。
米国心臓協会と米国脳卒中協会のガイドラインです。前回の改訂は2016年でした。
量と強度 ── 24時間以降は「中〜高強度」
全体の要点11項目のうち、4番目が量と強度について書いています。
Rehabilitation should provide sufficient amounts and intensity of various types of task practice to reduce functional impairments and teach compensatory strategies. After 24 hours poststroke, moderate to high-intensity exercise and task practice should be performed.
機能障害を減らし代償方略を教えるために、十分な量と強度の課題練習を提供すべきである。発症24時間以降は、中強度から高強度の運動と課題練習を行うべきである。
では24時間より前は
理学療法士向けの要点に、時期ごとの扱いが書かれています。
- 急性期(24〜48時間)は、体位変換と離床を段階的に進める
- 超急性期(24時間未満)は、非常に強い負荷を含む高用量の療法を避ける
- とくに重度の機能障害・脳出血・意識レベルの変容がある人では避ける
理由も書かれています。長時間・高負荷で複数セッションにわたる極端に早期の身体活動は、血行動態の安定性を脅かす。それが神経学的な悪化と転帰の悪化につながりうる、という説明です。
職種別の要点が公開された
ガイドライン本体とは別に、職種ごとの要点がPDFで出ています。いずれも執筆委員が作成したものです。
- 理学療法士向け 9項目。体重免荷トレッドミルとロボット支援は、課題特異的訓練を上回る歩行転帰の改善を示していない。下垂足のFESは従来の短下肢装具と同等
- 作業療法士向け 10項目。感覚と運動の介入を課題特異的訓練と組み合わせる。難しい場合はミラーセラピーが代替になる
- 言語聴覚士向け 10項目。嚥下のスクリーニングは入院24時間以内かつ経口摂取の前。疑わしければベッドサイドではなく嚥下造影やFEESで評価する
自分の職種の分だけなら数ページです。出典のリンクから読めます。
この記事で引用したのは、公式サイトで公開されている要点PDFの範囲です。ガイドライン本文には推奨クラスとエビデンスレベルが項目ごとに付されています。クラス表記を含む推奨の全文は、Stroke誌の本文に当たってください。
公式ページ同「Top Things to Know: 2026 Guideline for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery」(ガイドライン全体の要点11項目)
🔭 起こりそうな変化
米国のガイドラインなので、日本の診療報酬や運用がすぐ変わるわけではありません。ただ、職種別に要点がまとめて公開されているのは珍しく、自分の職種の分だけなら数ページで読み切れます。評価尺度や強度の目安が具体的に並んでいるので、いま使っている指標と見比べる材料にはなります。当サイトでも、職種別の要点を整理した記事を別途用意する予定です。
評価と根拠は職場が変わっても持ち運べる強みです
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今号を通して見えること
今週の4本は、リハ職をどこに置くかという同じ問いを、違う高さから見たものだと思います。学術会議は「地方自治体に置け」と提案し、介護の現場では国が推す取組の算定が1割前後にとどまり、来年度の改定に向けた意見交換会がこれから始まる。提案・現実・これからが同じ週に並びました。
ひとつ気に留めておきたいのは、学術会議の見解に「需要に対しては約1.5倍の供給」という推計が入っていたことです。役割を広げようという話と、人が余るという推計は、同じ文書のなかで地続きになっています。働く場所を増やす議論は、選択肢が増える話であると同時に、いまの場所だけでは収まらなくなるという話でもある。どちらの意味で読むかで、受け取り方はかなり変わってきます。
自分のキャリアに引きつけて読む
今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。
制度が変わっても、動けるかは準備次第
働ける場所や役割が広がっても、「制度上は可能になった」で止まることは少なくありません。
臨床の学び直しも、臨床の外で使えるスキルも、いまはオンラインで学べます。
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