【2026年8月第4週】リハ職の給料は上がったのか
2026年度改正の「答え合わせ」4選
制度が大きく動いた年の8月は、実際に何が変わったのかが数字や書類の形で見え始める時期です。今号は「制度がこう変わりました」ではなく、「自分の職場は実際どうなったのか」を確かめるための4本をまとめました。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てであり、確定した将来予測ではありません。
2026年7月30日 事務連絡/報告は8月
018月は勤務先が「賃上げの実績」を国に報告する月|PT・OT・STも対象職員
ベースアップ評価料は、医療機関が職員の賃上げを行うための財源として2024年度(令和6年度)に創設された診療報酬上の仕組みです。対象となるのは「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く。)」で、厚生労働省の届出資料には、その他の対象職種として理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が明記されています。つまりPT・OT・STの給与も、この評価料による賃上げの対象です。
この評価料を算定している医療機関は、毎年8月に賃金改善の報告書を提出することが求められています。7月30日に厚生労働省が示した疑義解釈(その11)では、令和8年度診療報酬改定より前から算定していた医療機関について、令和8年8月に「令和7年度の賃金改善実績報告書」と「令和8年度の賃金改善中間報告書」の2つを提出する必要があると回答されました。
中間報告で見るのは令和8年4月・5月分ではなく、6月・7月分の賃上げ実績です。比較の基準は、賃金改善前の給与体系を当てはめた場合の対象職員の基本給等総額と、実際の基本給等総額との差分とされています。要するに、制度上の賃上げが実際に給与へ反映されたのかどうかが、いままさに数字にされて国へ提出されている、ということになります。
一次資料厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その11)」(令和8年7月30日 事務連絡)別添2 問6・問7
🔭 起こりそうな変化
自分の給与がこの1年でどう動いたのかを確かめるには、ちょうどよい時期です。給与明細に手当が新設されていないか、基本給が上がっていないかを見て、わからなければ「うちはベースアップ評価料を算定していますか」と事務に聞いてみるのが早道だと思います。転職を考えている場合も同じで、求人票に書かれた給与額がこの賃上げを反映した後の数字なのかどうかで、他院と比較する前提が変わってきます。
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2026年4月1日施行/関連通知は5月8日
02高次脳機能障害者支援法が施行、回復期リハ病棟に退院支援体制の整備が義務づけ
高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)が2025年12月16日に成立し、同月24日に公布、2026年4月1日から施行されました。議員立法によるものです。厚生労働省の概要資料によれば、高次脳機能障害は記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害・失語・失行・失認その他の認知機能の障害として政令で定めるものを指し、患者数は全国で約23万人と推計されています。
具体的な施策として、地域での生活支援、教育的支援、就労の支援、権利利益の擁護、司法手続における配慮、家族等への支援、相談体制の整備が挙げられました。あわせて「専門人材の確保」も明記されています。都道府県は高次脳機能障害者支援センターに地域の支援業務を行わせることができ、支援体制を整えるための地域協議会には、医療(リハビリテーションを含む)・保健・福祉・教育・労働などの関係機関が構成員として位置づけられています。
現場の実務に直接影響するのが、2026年5月8日付の厚生労働省通知です。令和8年度診療報酬改定にあわせて、回復期リハビリテーション病棟入院料・特定機能病院リハビリテーション病棟入院料を算定する医療機関に、高次脳機能障害患者の退院支援体制の整備が義務づけられました。要件は3つで、①高次脳機能障害の患者に適したサービスを提供する事業所等の情報(所在地・連絡先・提供サービス等)をあらかじめ把握すること、②退院時に患者または家族等へその情報を説明したうえで提供すること、③退院後に他施設でのリハビリテーションへ移行する予定の患者について、同意が得られた場合は3か月以内に作成したリハビリテーション総合実施計画書等を文書で提供すること、とされています。
一次資料厚生労働省「高次脳機能障害者支援法関係通知について」(概要・関係条文・関係通知の掲載ページ)
一次資料厚生労働省「高次脳機能障害者支援法概要(令和7年法律第96号、令和7年12月24日公布)」
一次資料厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長「高次脳機能障害者への退院支援に関する診療報酬の改定等について」(障精発0508第1号・令和8年5月8日)
🔭 起こりそうな変化
回復期リハ病棟で働くPT・OT・STにとっては、退院支援の実務が増える一方で、高次脳機能障害への対応力が病棟の要件として位置づけられたことになります。注意・遂行機能・社会的行動障害を扱う作業療法士、失語を扱う言語聴覚士の専門性に、制度上の裏づけがついた形です。都道府県の支援センターや地域協議会という、病院の外の関わり先が生まれる点も見逃せません。ただし法律には「努めなければならない」という表現の施策も多く、地域によって整備のスピードには差が出そうです。
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2026年7月30日 事務連絡
03看護・多職種協働加算、配置人数の一時的な変動は「都度の届出は不要」と明確化
前号で取り上げた「看護・多職種協働加算」について、同じ7月30日の疑義解釈(その11)で運用上の取扱いがひとつ明確になりました。
施設基準の通知では、1日あたり勤務する看護要員の数や入院患者との比率について、歴月で1か月を超えない期間の1割以内の一時的な変動であれば、その都度の届出は必要ないと定められています。今回の疑義解釈では、看護・多職種協働加算および精神病棟看護・多職種協働加算の施設基準における「看護職員を含む多職種の数」についても同様の取扱いでよいか、という問いに対し「よい」と回答されました。
細かい実務の話に見えますが、意味するところは「配置人数が一時的に基準を下回っても、すぐに加算が取れなくなるわけではない」ということです。産休・育休や退職で欠員が生じやすい職場でも、一定の幅が認められることになります。
🔭 起こりそうな変化
病棟配置というポジションは、人員の増減で不安定になりやすい面があります。今回の取扱いによって、多少の変動では加算が途切れない運用であることが確認されました。とはいえ、この加算の算定にリハ職の配置は必須ではなく、看護職員のみの配置でも算定可能とされています。病棟配置のポジションが定着するかどうかは、やはり各医療機関の方針次第という状況は変わっていません。
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2026年8月19日 公表
04リハ現場の生成AI活用、差がついたのは「個人の工夫」ではなく「職場の仕組み」
PT-OT-ST.NETが実施した生成AI活用アンケートの第2弾レポートが、8月19日に公開されました。回答者は105名、平均年齢45.0歳で、管理職が41%、役職者は全体の75%を占めています。同サイトの調査では、リハ現場の生成AI利用率が1年で36%から86%へ上昇したことが報告されていました。
今回のレポートで目を引くのは、個人の判断で使っている人(55名)と、組織として導入した職場の人(32名)とで結果に差が出た点です。時短効果について「ほとんど変わらない」と答えた割合は、個人利用では24%だったのに対し、組織導入では0名でした。組織導入では、電子カルテと連携したサマリーの自動生成、インシデントレポートの集計・傾向分析、議事録や文字起こしの自動化といった、踏み込んだ活用が報告されています。
使っていない15名の理由として上位に挙がったのは「職場にルールがない」(8件)と「職場で禁止・利用困難」(6件)で、本人のスキル不足ではなく職場環境が制約になっていました。一方でこの15名は全員が今後の利用に前向きと回答しています。導入後の課題としては「正確性・出力の安定性」(9件)が最も多く挙がりました。
なお、この調査は同サイトによる自主アンケートで、回答者に管理職・役職者が多く含まれます。テーマに関心の高い層ほど回答しやすい調査であることを踏まえると、業界全体の実態よりも活用が進んで見えている可能性があります。
🔭 起こりそうな変化
生成AIを業務で使えるかどうかが、個人の努力ではなく職場のルール整備に左右されている、という構図が見えます。裏を返せば「職場にルールがあるかどうか」は、これから職場を選ぶときのチェック項目になりうるということです。面接や職場見学の場で、記録業務の効率化にどう取り組んでいるか、ICTやAIの利用ルールが整備されているかを聞いてみると、その職場が業務改善にどれだけ本気なのかが見えてきます。
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今号を通して見えること
4本に共通するのは、「制度は動いた。では自分の職場は実際どうなのか」という問いです。賃上げは報告書という形で数字になり、高次脳機能障害への対応は病棟の要件になり、病棟配置の運用は疑義解釈で細部が固まりました。生成AIの調査でも、差を生んでいたのは個人の工夫ではなく職場の仕組みでした。
制度の動きを追いかけることには意味がありますが、それだけでは自分の状況は変わりません。8月は、勤務先が何を算定し、何を報告し、どんなルールを持っているのかを確かめるのに適した時期です。そこで見えた事実は、いまの職場に留まる判断にも、動く判断にも、同じように材料になります。
自分のキャリアに引きつけて読む
今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。
制度が変わっても、動けるかは準備次第
働ける場所や役割が広がっても、「制度上は可能になった」で止まることは少なくありません。
臨床の学び直しも、臨床の外で使えるスキルも、いまはオンラインで学べます。
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