キャリア

作業療法士3年目の現在地
分野で変わる仕事と、やりたいことの置き場所

最終更新:2026年9月17日

3年目になると、後輩がつきます。実習生も回ってきます。
同時に、自分の給料がこの先どう上がるのかも、だいたい見えてきます。
そして作業療法の場合、もうひとつ考えることがあります。今いる分野を続けるのかどうかです。

変わるのは仕事の中身より、立ち位置

やっていること自体は、2年目とそんなに変わりません。評価をして、プログラムを組んで、記録を書く。

変わるのは、自分の患者さんだけ見ていればよかった状態が終わることです。 後輩の質問に答える。実習生のレポートを見る。新人が困っていたら手を貸す。

誰に来るかは、その年の新人の数と、上の世代が何人いるかでも決まります。 上が薄い職場なら、3年目に指導が回ってきます。

それに加えて、仕事ができる人ほど振られる量が増えます。 任されるのは信頼されている証拠でもあるのですが、3年目はまだ断りにくい立場です。 結果として、自分では仕事量をコントロールできないまま抱えることになります。

しかも同じ時期に、自分のやりたいことも見えはじめます。 もっとこの分野を診たい。この勉強をしたい。 振られる仕事と、やりたいことのあいだに差が出てくる。 3年目がしんどくなるとしたら、だいたいここです。

そしてもうひとつ。仕事が増えた分だけ給料も増えるかというと、そうはなっていません。

給料の段差は「5年目」にある

経験年数ごとの給料は、国の調査で公表されています。 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士をまとめた区分の数字です。

経験年数別の所定内給与(月額)

  • 経験0年24.5万円
  • 経験1〜4年← 3年目はここ25.9万円
  • 経験5〜9年28.8万円
  • 経験10〜14年30.4万円
  • 経験15年以上34.1万円

令和7年賃金構造基本統計調査(職種 第14表・第15表・男女計)。 所定内給与なので、残業代と賞与は含みません。毎年6月分の調査です。

3年目は「1〜4年」の枠の中にいます。 次の段差は5年目以降で、その差は月に約2.8万円

ただしこれは全国の平均です。自分の職場の昇給額は、就業規則か給与規程に書いてあります。全体の平均年収や推移はこちらにまとめています

作業療法は、分野が変わると別の仕事になる

ここが作業療法士のキャリアでいちばん大きいところだと思います。 同じ資格で、同じ「作業療法」という名前なのに、分野によって求められるものがまるで違います。

訪問・在宅

生活の場に入って、動作と環境を一緒に見ます。移動や基本動作を扱う場面も多く、理学療法に近い仕事をしている感覚になることもあります。福祉用具や住宅改修の判断も回ってきます。

整形・手の外科・形成

手指や上肢が中心。スプリントを作る、腱や神経の回復に合わせて負荷を調整する、瘢痕を管理する。解剖と術式の理解がそのまま結果に出ます。

精神科

評価の軸が身体機能ではありません。生活リズム、対人関係、就労や復職。集団を使ったプログラムも多く、身体分野とは別の技術が要ります。

回復期のADL

食事・排泄・入浴・更衣を、退院後の生活から逆算して組み立てます。家族の状況や住環境まで含めて考える時間が長い分野です。

高次脳機能

半側空間無視、注意障害、記憶障害、遂行機能。見えにくい障害を評価して、本人と家族に説明するところまでが仕事になります。

身体障害・麻痺へのアプローチ

上肢機能へのアプローチ、痙縮への対応、装具や機器の活用。急性期か回復期かで、できることも求められることも変わります。

必要な知識も、1日の流れも、評価の軸も違います。 3年かけて身につけたものが、分野を移ると一度リセットに近い状態になることもあります。 逆に言えば、合わない分野に長くいる理由もありません

作業療法士の仕事の充実度は、やりたいことと、いま働いている場所が一致しているかでかなり決まります。給料や勤務時間より先に、ここを確認する価値があります。

「とりあえず3年」は誰が決めたわけでもない

3年は区切りとしてよく言われます。ただ、3年未満で辞めると不利になるという決まりがあるわけではありません。

面接で見られるのは、在籍した長さそのものより、 辞める理由と次に行く理由がつながっているかどうかです。 分野を変える場合は、その説明がしやすいほうだと思います。

OTに多い退職理由と、面接での伝え方はこちら。本音を隠すのではなく、前向きな形に置き換える話をしています。

3年目で見えてくる4つの方向

何がやりたいかは、学生のうちには決まりません。3年やって、ようやく輪郭が出てきます。 だいたい次の4つに分かれます。

分野を決めて深める

この分野でやっていく、と決める。そうすると必要な勉強も、次に行くべき職場も自然に絞られます。

役職に進む

主任や係長になると、見る対象が自分の患者さんから部門や施設全体に変わります。人の配置やシフト、部門の数字に貢献する仕事です。

研究・教育に関わる

学会発表、養成校の非常勤、実習指導者。ここは職場の理解と方針に大きく左右されます。時間を出してくれる職場かどうかで、できることがまるで変わります。

生活を優先する

結婚、出産、介護、住む場所。生活環境のほうが第一優先になる時期は誰にでもあります。仕事の中身より、勤務時間と通勤距離が先に決まります。

どれが正解ということはありません。 ただ、それぞれに適した職場はあります。 手の外科をやりたい人が、その症例が来ない病院にいても進みません。 生活を優先したい時期の人が、365日体制の病院にいると噛み合いません。

動く前に、職場で確かめておく3つ

辞めるかどうかを決める前に、今の職場について分かることがあります。 全部、転職活動をしなくても調べられます。

  1. 1. やりたい分野が、今の職場にあるか

    精神科に興味が出ても、身体分野しかない病院では試せません。院内の異動で届く範囲なのか、それとも職場を変えないと届かないのか。ここは早めに切り分けておきたいところです。

  2. 2. 昇給額と賞与の決まり方を、自分で説明できるか

    毎年いくら上がるのか。賞与は何ヶ月分で、何によって変わるのか。答えられないなら、5年後の想像は当てずっぽうになります。

  3. 3. 後輩指導の分が、評価か手当に乗っているか

    指導は時間を取られる仕事です。乗っていないなら、負担だけが増えて数字は変わらない状態が続きます。

3つとも「分からない」「ない」だった場合、それは今の職場が悪いという話ではなく、自分が進みたい方向の前例がないということです。外を見る理由としては十分だと思います。

外を見てみる場合

3年目は、求人を見るだけならいちばん気楽な時期でもあります。 即戦力として扱われはじめる一方、まだ「育てる前提」で採る職場も多いからです。

分野を変えたい場合はとくに、求人票だけでは中身が分かりません。 その病院のOTが実際に何を担当しているのかは、外から見えないところにあります。

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