【2026年8月第3週】リハ職が働ける場所が広がった
2026年度の制度改正4選
今回は速報ではなく、2026年度に施行されて、いま現場に効いている制度を棚卸しします。取り上げるのは、リハ職の「働ける場所」「役割」「待遇」を変えた4つの改正。施行から数か月が経ち、そろそろ職場で話題になり始める頃の内容です。各ニュースの「起こりそうな変化」は現時点での見立てであり、確定した将来予測ではありません。
2026年4月1日施行
01PT・OT・STが保育所で「保育士とみなされる」特例が新設
2026年3月16日に公布され、4月1日から施行された「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の一部を改正する内閣府令」(令和8年内閣府令第10号)により、保育所において理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等を、1人に限り保育士とみなすことが可能になりました。従来は保健師・看護師・准看護師のみに認められていた特例が、リハビリ専門職にも広がった形です。
対象となる「特定理学療法士等」は、①PT・OT・ST・心理担当職員・障害児の療育指導業務に5年以上従事した者のいずれかに該当し、かつ②「子育てに関する知識及び経験を有する」ことの両方を満たす必要があります。②は保育所等における勤続年数が3年以上であることを指しますが、これに該当しない場合でも、子育て支援員研修の地域保育コース等を修了すれば該当するものとして扱われます。
保育を行う際は、保育士と合同の組・グループを編成し、原則として同一の保育室等で保育を行うことが求められます。看護師等の特例と併用でき、その場合はそれぞれを支援する保育士を別の人にする必要があります。小規模保育事業所(A型・B型)・事業所内保育事業所・認定こども園も同様の扱いです。
🔭 起こりそうな変化
小児・発達領域に関心のあるリハ職にとって、保育所という新しい勤務先が制度上開かれたことになります。ただし「1人に限り」という枠があるため求人が急増するとは限りません。療育や障害児支援の経験がある方、あるいは保育所ですでに働いた経験のある方は、要件を満たしやすい立場にあると言えそうです。
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2026年6月1日施行/指針は4月23日発出
02「看護・多職種協働加算」新設、PT・OT・STの病棟配置が評価対象に
令和8年度診療報酬改定で「看護・多職種協働加算」が新設され、2026年6月1日から実施されています。急性期の病棟(急性期一般入院料4、および同等の基準を満たす急性期一般入院料B)において、看護職員・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・臨床検査技師のいずれかを、入院患者25人に対して1人の割合で病棟に配置する体制を評価するものです。これまで病院の収入がリハビリテーション料(実施単位数)で決まっていたのに対し、リハ職が病棟にいること自体が評価される仕組みができたことになります。
厚生労働省の留意事項通知は、病棟に配置されたPT・OT・STの業務について「各々の職種の専門性に基づき、入院患者の移動・食事等のADLを含む入院中のあらゆる動作やコミュニケーションについて、随時、入院生活で患者が実際に活動する場面に合わせた評価、指導、患者自らが生活動作を行えるようになるための支援等」を行うことと定めています。日本作業療法士協会はこれを、訓練室で獲得した「できるADL」を病棟での「しているADL」へ橋渡しする役割と整理しています。
働き方に直結するのが算定上の扱いです。通知では、この加算で配置された者は「病棟における業務に従事している時間において、原則として(特掲診療料の点数は)別に算定できない」とされています。つまり病棟に配置されている時間は、個別リハビリテーションの単位を取りません(摂食機能療法のみ、条件を満たせば例外的に算定可)。実施単位数のノルマとは別の軸で評価されるポジションが、制度上できたことを意味します。
一方で、中央社会保険医療協議会での検討過程では「各職種にはそれぞれの資格に応じた専門性があるため、その専門性がしっかりと発揮できるような病棟体制とすることが不可欠」といった意見や懸念が示されていました。これを受けてリハビリテーション専門職団体協議会(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会)が4月23日に実践指針を発出。日本作業療法士協会の資料は、病棟における業務は医師の指示に基づく「診療の補助(リハビリテーション)」であり、「療養上の世話」とは区別される必要があると明記しています。2月にはPT協会が単独で暫定版を出しており、今回は3団体の協議を経た確定版です。
ただし注意点があります。2026年4月1日の疑義解釈では「看護職員のみの配置で他職種を配置しなくても算定できるのか」という問いに対し「算定可能」と回答されています。病院はリハ職を配置しなくてもこの加算を算定できるため、制度としてリハ職の病棟配置が評価される道はできても、実際にそのポジションを設けるかどうかは各医療機関の判断に委ねられています。
🔭 起こりそうな変化
単位数に追われる働き方に限界を感じている人にとって、病棟配置は選択肢のひとつになりうる制度変更です。ただし加算の算定にリハ職の配置は必須ではないため、実際にポジションが生まれるかは病院次第。施設基準では、多職種で業務内容を文書により整理し、半年に1回以上見直すことが求められています。自分の病院がこの加算を算定しているか、算定している場合に業務内容の文書がどう整理されているかは、確認しておく価値がありそうです。
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2026年6月1日施行
03摂食嚥下機能回復体制加算、STの「専従」要件が「専任」に緩和
令和8年度診療報酬改定で、摂食嚥下機能回復体制加算1・2の施設基準について、言語聴覚士の配置要件が「専従」から「専任」に見直されました。
「専従」はその業務にのみ従事することを求めるのに対し、「専任」は主として従事すればよく、他業務との兼務が可能になります。ST人員に余裕のない施設でも加算を算定しやすくなる方向の変更です。
あわせて、療養病棟で算定される加算3の実績についても、加算1・2と同様に経腸栄養から経口摂取へ回復した患者を算入できるようになりました。中心静脈栄養の実施を前提とした要件が現場の取り組みを評価しにくくしていた、という課題への対応とされています。
🔭 起こりそうな変化
STが1人しかいない職場では「専従」要件がネックで加算を取れないケースがありました。専任化によって算定できる施設が増えれば、STの配置価値が数字で見えやすくなります。求人票に「摂食嚥下機能回復体制加算 算定」と書かれているかは、その病院がSTの専門性をどう位置づけているかの手がかりになるかもしれません。
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2026年6月1日施行
04訪問リハビリが処遇改善加算の対象に、加算率1.5%
2026年6月施行の介護報酬改定(期中改定・改定率+2.03%)で、訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーションが介護職員等処遇改善加算の対象サービスに新たに追加されました。加算率は1.5%です。
従来「介護職員」向けだった処遇改善加算が「介護従事者」全体へと対象を広げたことにより、PT・OT・STが初めて処遇改善加算の対象となりました。訪問看護・居宅介護支援にも同時に加算が創設されています。
算定にはキャリアパス要件(賃金体系を就業規則に定める、職員研修等を計画する等)と職場環境等要件を満たす必要があります。加算額は、処遇改善加算を除く加減算後の1か月あたり総単位数に加算率を掛けて算出します。
🔭 起こりそうな変化
制度上は給与改善の道が開かれましたが、実際に手取りが増えるかは事業所が加算を算定し、どう配分するかにかかっています。訪問リハで働いている方は、勤務先が加算を算定しているか、配分ルールがどうなっているかを確認してみると、自分の待遇の実態が見えてくるかもしれません。
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今号を通して見えること
4本を並べると、2026年度の改正には共通の方向があります。リハ職を「病院のリハ室にいる人」から「いろいろな場所で専門性を発揮する人」として位置づけ直す動きです。保育所で保育士とみなされ、病棟で多職種協働の一員として評価され、訪問先で処遇改善の対象になる——いずれも従来の枠の外に出る変化でした。
ただし、制度が変わることと、自分の職場や給与が変わることは別の話です。「制度上は可能になった」という段階のものが多く、実際にどう運用されるかは職場ごとに差が出ます。だからこそ、自分の勤務先が何を算定していて、どんな方針なのかを知っておくことが、これからのキャリアを考える材料になります。
自分のキャリアに引きつけて読む
今号の内容に関連して、選択肢を整理した記事です。
制度が変わっても、動けるかは準備次第
働ける場所や役割が広がっても、「制度上は可能になった」で止まることは少なくありません。
臨床の学び直しも、臨床の外で使えるスキルも、いまはオンラインで学べます。
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